『貞子』 名高いあの恐怖シーンも登場

(C)2019「貞子」製作委員会

 1998年に公開された『リング』の衝撃は凄まじかった。特に、井戸からまず黒い髪が現れ、はい出てきてきた貞子がブラウン管を抜け出た時の怖さとおぞましさ! 今でも映画であれを上回る恐怖を知らない。間違いなく怖さを理詰めで追求した映画の到達点と言っていいだろう。

 その『リング』の監督・中田秀夫が、原作者・鈴木光司のシリーズ最新刊『タイド』を映画化したのが本作だ。心理カウンセラーのヒロインと、動画クリエイターを目指すその弟が貞子の呪いに巻き込まれていく今回は、早々に名高いブラウン管のシーンが登場する。それだけでも観る価値は十分。ただし、ベテランになった今の中田監督と、才気がみなぎっていた当時の彼とでは、やはり意欲が違う…。

 ホラー映画では得てして、化け物が直接襲ってくるクライマックスが一番怖くなかったりするものだが、本作もまさにそう。海岸の祠で水の中に引きずり込まれそうになる姉を、弟が貞子に覆いかぶさって守ろうとする際の嘘臭さ。その直前には、祠が岩に埋まってしまうと、事前に用意してあったかのような丸太が。『カメラを止めるな!』のギャグ「こんなところにちょうどいい斧が!」を想起させる演出に、ベテランの慣れが生む雑さを感じた。近年は、貞子をあえてギャグとして扱った宣伝展開も目立つので、ひょっとしたらこれも笑いを狙ったものかもしれないが…。とはいえ、影や鏡を使った間接表現などベテランらしい切れ味鋭い演出もあるから、ぜひ過去作と観比べてほしい。★★★☆☆(外山真也)

監督:中田秀夫

出演:池田エライザ、塚本高史、清水尋也

5月24日(金)から全国公開

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