『空母いぶき』 もし日本が武力攻撃を受けたら?

(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ

 『沈黙の艦隊』『ジパング』などで知られるかわぐちかいじの同名漫画を映画化した戦争エンターテインメント大作だ。自衛隊が戦闘機を発着可能な航空母艦を保有した架空の日本を舞台に、もし日本が武力攻撃されたら? という極限状況下でのさまざまな判断や思惑が描かれる。だから、『シン・ゴジラ』のような災害対策シミュレーション映画の趣もありつつ、日本の憲法の、そして自衛隊の根幹をなす「専守防衛」の問題について多方面から考えさせられる社会派要素も併せ持つ。

 ただし、本作は『シン・ゴジラ』と比べるとウエット(情緒的)。それは、街も人も華やぐクリスマス・イブ直前の24時間に限定し、考え方の違う、空自のエースパイロットだった艦長vs海自生え抜きの副長、あるいは政府vs市井という対立構造を設けた分かりやすさが大きいのだが、ドライな『シン・ゴジラ』があれだけヒットした以上、このヌルさ、エンタメ性は果たして吉と出るか凶と出るか?

 また、戦争映画ならではのスペクタクルに関しても、CG技術やバジェット面ではハリウッドにまだまだ遅れを取る。その代わり日本映画には、アニメや怪獣映画で培った高いスキルとオリジナリティーがある。本作の一番の見どころは、やはり戦争の最前線。海上、海中、空の三つ巴でスリリングな攻防が繰り広げられる戦闘シーンにこそある。★★★★☆(外山真也)

監督:若松節朗

出演:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、佐藤浩市

5月24日(金)から全国公開

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