隣県との“外交”

 「これまで新幹線整備を求めたことはないし、今も求めていない」。先月、九州新幹線長崎ルートの未着工区間、武雄温泉-新鳥栖間について、佐賀県の山口祥義知事はこう発言した▲長崎-武雄温泉間は2022年度の暫定開業へ向けて工事が着々と進行中なのに、武雄温泉の先については、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)案が頓挫したまま。その整備方法を話し合う与党検討委員会でのことだった▲本県側が求める全線フル規格でもミニ新幹線でもない“建設反対”発言。本県選出の谷川弥一衆院議員は先日、その場を振り返って「山口知事に『今は韓国か北朝鮮を相手にしている気分だ』と言ったが、いくら言っても一緒」と発言した▲佐賀県と意見がなかなか折り合わず、いら立ちがあったのかもしれない。取材に対し、国交のない北朝鮮を挙げたことについては「言葉が走った」と釈明した▲これに対し山口知事は、新幹線を巡る議論を外交問題に例えたことについて「適切でない」と不快感を示し、「これまでも長崎県と真摯(しんし)に向かい合ってきた」と述べた▲本県はその佐賀県に理解を求める立場であることを見詰め直したい。政治家の不用意な発言で、佐賀県との関係を感情面でもこじらせてしまったら、新幹線整備はますます足踏みしかねない。(泉)

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