<隠れた名盤> 田村芽実『Sprout』 フルアルバムの充実感、とにかくスゴイ!

田村芽実『Sprout』

 1998年生まれの女性の1stミニアルバム。歌うまアイドル…、新進ミュージカル女優…、どんな言葉も違う気がする。そんな言葉じゃ伝えられない。

 CDは全6曲なのにフルアルバムの充実感。1曲目『First Flash』で消えそうな声や溜め息、裏声を駆使して繊細な恋心を表現したかと思えば、次の『1,2,3,Go!!』で、松浦亜弥ばりのド直球アイドルソングを披露。また、深田太郎作曲の2曲中、松井五郎作詞の『体温』では穏やかな女性に、阿久悠作詞の『カガミよカガミ』では奔放な女性と、まるで中堅女優のようだ。いずれも、デビュー時と比べても急成長が実感できる。

 圧巻は末満健一×和田俊輔による2曲。コミカルな『無形有形』では、「もう子供じゃない」「まだ子供だし」と他人の定義をスルリとかわして惑わせる。他方、ラストの『歌が咲く』では、歌を届けたくてたまらないという感情のままに熱唱し、その気高さに言葉を失った。…とにかくスゴい!

 DVDでも、自身のオリジナル曲に加え、ハロプロ系の楽曲や昭和アイドル曲(本田美奈子『孤独なハリケーン』も新境地)のカバー、シリアスなミュージカルのナンバーと、これまた盛り沢山。なのにMCは「いつまでも、めいめいと呼んでね☆」と、甘えん坊キャラ全開で、正体の謎は深まるばかり。本作を堪能すれば、「あの人はこういう性格だ」という噂よりも、まずは自分で確かめたくなるはず。

(ビクター・CD+DVD初回限定盤4500円+税)=臼井孝

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