長崎市、控訴断念表明 被爆体験者差し戻し審

 国が指定する地域の外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」の上戸滿行さん=2011年に81歳で死去=について、入市被爆を認めた長崎地裁の差し戻し審判決を受け、長崎市は21日、控訴を断念する方針を表明した。

 国とも調整を進めており、28日の控訴期限後に判決が確定すれば、生前の一定期間の健康管理手当や、死去に伴う葬祭料が遺族に支払われる可能性が出る。

 長崎市原爆被爆対策部の中川正仁部長が21日、被爆体験者による集団訴訟の原告や支援者と市役所で面会、控訴断念の要望に対し回答した。被爆体験者側は被爆体験者を被爆者と認める抜本的な救済も要望し、中川部長は「一歩でも前に進むように取り組む」と述べた。

 田上富久市長は同日の定例会見で控訴断念の理由について「判決は制度に関わるものではなく個別案件だ。裁判所の判断を尊重したい」と語った。審査の在り方を巡っては「現在でもいろんな情報を集めながら審査している。今後も基本方針は変わらない」とした。

 上戸さんは被爆体験者集団訴訟の原告の一人。最高裁が2017年に被爆の有無を審理させるため地裁に差し戻した。地裁は5月14日、入市被爆を認め、被爆者健康手帳の交付と、健康管理手当の支給申請を却下した市の処分を取り消す判決を出した。

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