裁判員制度ふくしまの10年 辞退率上昇に危機感

©株式会社福島民報社

 裁判員制度施行から丸十年を迎えた二十一日、福島市の福島地裁と郡山市の地裁郡山支部で裁判員経験者と法曹三者の意見交換会が開かれた。経験者からは「毎日が新鮮で有意義だった」と肯定的な意見が出る一方、「上司から『こんなことで休むのか』と言われた」「長期間の審理になれば参加できたか分からない」との声も上がった。裁判への市民感覚の反映を目的に始まったが、裁判員候補者の辞退率は年々上がる傾向にあるなど課題が浮き彫りとなっている。

 昨年は福島地裁が70.2%、地裁郡山支部は過去最高の71.1%で、全国平均の67%を上回った。審理の予定日数は、選任手続きの期日を知らせる呼出状で告げられる。昨年の県内の初公判から判決までの平均審理日数は六・九日で、三・三日だった十年前の二倍以上となった。

 辞退の主な理由の一つに「仕事上の重要な用務」がある。福島大行政政策学類の新村繁文特任教授(69)(刑法)は「審理が長くなると分かれば、仕事を抱える人が参加しづらくなるのは当然」と指摘する。企業側の協力を得やすくするには「社員の裁判への参加に伴う業務の滞りなど、企業側の損失を補う制度が必要」と訴える。

 辞退率が上がっている背景について最高裁は「制度開始から十年が経過し、市民の関心が薄れてきているのではないか」と危機感を抱く。福島地裁は「これまで以上に制度の意義を発信することが大切。県民が司法への関心を高める取り組みを進める」としている。

 裁判員制度への参加を促すには、心理的負担の軽減も重要となる。地裁郡山支部で強盗殺人事件の裁判員を経験した女性は、刺殺された遺体の写真を見たことなどで急性ストレス障害になったとして、二〇一三(平成二十五)年五月、国に損害賠償を求めて提訴した。訴えは退けられたが、全国の裁判員裁判で事件現場の写真をモノクロで示したり、イラストに差し替えたりする動きが広がった。

 二十一日の意見交換会に出席した福島地検の田中邦彦検事は「(傷の写真など)生の証拠を見て判断してほしいが、ショックを受ける方もいる」と述べた。「公正さ」が大前提となる裁判で、司法関係者が証拠に基づく立証と裁判員の負担軽減のバランスに苦慮している姿が垣間見えた。

 最高裁は二〇〇九年から裁判員のメンタルヘルスサポート窓口を設けた。二〇一八年十二月末までの利用件数は計四百十件で、開設から同期間で選任された八万八千九百八十七人に占める割合は0.5%にとどまる。新村教授は「自主申告しないとサポートを受けられないのは問題。裁判所は受け身の姿勢ではなく、事後調査などを通じて積極的に裁判員の心理的負担の実態を把握すべきだ」と求めた。

※裁判員の辞退条件 裁判員法と裁判員の辞退事由を定める政令では、裁判員に選ばれた場合、基本的には出頭義務が課されている。ただし、70歳以上の人や学生、病気や妊娠、介護など正当な理由があれば辞退が可能となる。重要な仕事があり、自身で処理しなければ職務に影響が生じる場合も辞退できる。