生物多様性は生命を支えるインフラ:環境省らが力説

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シンポジウム「生物多様性と食と健康~SDGsを身近に~」の会場の様子。11日、国連大学エリザベス・ローズ国際会議場にて

22日の「国際生物多様性の日」を前に環境省などは、「生物多様性と食と健康」と題したシンポジウムを開催し、生物多様性に配慮した食料生産がSDGs(持続可能な開発目標)達成に資することなどを議論した。クリスティアナ・パシュカ・パルマー生物多様性条約事務局長は「生物多様性は人類を含む地球上すべての生命を支える天然のインフラであり、人類は分野横断的に生産から消費までを通じた確固たる取り組みが必要」とメッセージを寄せた。(松島 香織)

シンポジウムは環境省の他、国連大学サステナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)が主催し、行政担当者や研究者、漁業従事者らが登壇した。

登壇者らは現在の生産、加工、輸送、消費、廃棄という一連の食料生産・調達方法が「土地劣化」を引き起こしていること、生物多様性が継続的に衰退するにつれ伝統的な農業方法や知識も衰退すること、先進国は途上国の自然資源を利用しているが技術提供などをして途上国へ還元すること(遺伝資源の公正な配分)などを指摘した。

一方、食料生産・調達方法を見直し調和を図ることが生物多様性の損失と気候変動を阻止し、SDGsの達成に貢献できると強調した。また環境省が提唱する、生物多様性を守るために一人ひとりが5つのアクションから選んで宣言する「MY行動宣言」への参加を会場に呼びかけた。

里山農業での自給が解決方法のひとつ

日本は多くの食料を海外からの輸入に依存しているが、農産物の生産には水が使用されており、食料の輸入は同時にその生産国の水を消費していることになる。日本が輸入取引をしている米国や豪州は、長い年月をかけて地中に蓄積した「化石水」を汲み上げて農業生産に使用している。

UNU-IAS上級客員教授で公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の武内和彦理事長は、「私たちは日本で豊かな食生活を満喫しながら他方、世界の水の枯渇に『貢献』している」と指摘した。一方日本はもともと鉱水に恵まれており、里山農業のように農産物を自給することで問題解決になり、国内で自給し安全に供給することが結果として人々の健康維持につながると話した。

一人ひとりの意識改革が生物多様性を促進する

UNU-IAS リサーチフェローのイヴォーン・ユーさんは「子どもたちへのSDGs教育がもっとも重要」と話した

UNU-IAS リサーチフェローのイヴォーン・ユーさんは、国連食糧農業機関(FAO)のデータを基に食料と農業における生物多様性の衰退を指摘した。それにより食事内容の簡素化や高エネルギー食品へ依存するようになり、栽培植物は遺伝資源の浸食と病気リスクの増大が引き起こされる。結果、肥満や栄養失調などの健康問題や生産システムの衰弱による食料不安が起きるという。

ユーさんは、農業の生物多様性向上のために形の悪い野菜や果物でも気にしないこと、過剰に食べフードロスを起こさないこと、生産者に思いをはせることなどを提案した。

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)の調査では、2030年までにSDGsを達成するのは難しいという悲観的な結果が出ているが、ユーさんは「消費者一人ひとりの役割の認識・知識不足が原因のひとつだ」と指摘する。

環境省の中井徳太郎・総合環境政策統括官は、食と健康など個人に身近なテーマで議論することが大切であり、「全ての人が地球システムを担っている生活者であるという感性を取り戻さなければならない」と総括した。

来年2020年は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された「愛知目標」の短期目標の期限となる。次回の締約国会議は中国・昆明で来年10月に開催予定だ。「愛知目標」を引き継ぐ次の目標設定がもっとも重要なテーマになると見込まれており、2030年を目標年とするSDGsとの整合が必要になる。