社説:南海トラフ予知 困難認め着実な減災を

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 南海トラフ巨大地震の直前予知は、ほぼ不可能―。日本の地震学者がそう考えていることが、アンケートで分かった。

 発生する時や場所、規模を正確に言い当てる直前予知を100回試みても99回程度は失敗するという。成功は100回に1回だとすれば、とても予知とはいえまい。

 かつて1970年代に予知は可能との前提で東海地震対策が始まったが、2011年の東日本大震災などを経て「不可能」とする考えが広まった。実用化の困難さが改めて示されたといえよう。

 気象予報の技術が進歩し、いろいろなことが事前に分かるようになった。地震がいつ起こるか知ることができれば、地震国に住む不安は一気に解消されると、私たちはつい期待しがちだ。

 しかし、現状を理解しなくてはならない。予知に頼らず、「地震は不意打ち」を前提とした対策を進めていきたい。

 すでに政府は、事前の警戒呼びかけに軸足を移している。住宅耐震化などの防災・減災対策に一段と力を入れるべきだ。

 アンケートは林能成関西大教授が、日本地震学会の代議員らに行った。異常の観測や危険判定など、予知情報を出すのに必要な4段階について、成功する可能性を回答してもらった。

 林教授は予知の難しさが市民や行政担当者に正しく伝わっていないという。「突然の地震でも被害を少なくする防災を進めるのが先」との指摘はもっともだ。

 むしろ地震のメカニズムの複雑さが分かってきたからこそ、予知の困難さが明らかになった。そのことを前向きに受け止めたい。

 南海トラフ対策は、一定程度の大地震が起きた場合、さらに大きな地震が起こりうると警戒を呼びかけ、住民避難につなげる仕組みとなっている。だがアンケートでは、「危険が高まった」と判定できても、即座に発表できる確率は平均40%にとどまっている。

 すぐには地震が起きない「空振り」のリスクもあり、事前避難を頼りにする危うさも浮き彫りになったといえるのではないか。

 政府の長期評価で、南海トラフでマグニチュード(M)8超の巨大地震が起きる確率は「30年以内に70~80%」とされる。

 京都、滋賀でも多くの犠牲者や建物の倒壊、ライフラインの寸断が予測される。防災計画が機能するかしっかり点検し、被害を最小限に食い止める地域づくりに取り組む必要がある。