2回8失点の“洗礼”を糧に…ロッテドラ3左腕がたどり着いた「シンプル」な思考

ロッテ・小島和哉【写真:荒川祐史】

イースタン・リーグトップの防御率2.31、ロッテ小島がホロ苦デビューから得たもの

 プロ初マウンドとなった4月4日の西武戦、2回8失点で降板したロッテのドラフト3位ルーキー小島和哉投手。その左腕が5月21日現在、イースタン・リーグで1勝2敗ながら防御率はリーグトップの2.31と安定した数字を残している。プロの洗礼を受けた試合直後、「しっかりと反省して次へ」と語っていたルーキーは今、どんな思いを抱き、ファームで“奮投”しているのか。

 小島は「勝ち星は打線の巡り合わせもあるので、そこまで気にしてはいませんが、防御率はもう少し良かったらと思っています」と、現時点でのファームの成績について語る。この好成績の要因には、やはり1軍デビュー戦での経験があったのだという。

「あの試合で自分が今、やらなくてはいけないことが何かということを、しっかりと分析できたと思っています。それを今、(ファームで)一個ずつ消化して行ってる感じです」

 ファームでの取り組み。まず一つ目はボールの高低。特に低めに投げることへの意識だ。

「(西武戦では)真っ直ぐも変化球も高かったので、いいコースにボールが入った時に、打者が振ってくれないという状況でした。そこを今、すごい意識して取り組んでいるので、それも成果につながっていると思います」

 その成果の一つに挙げられるのが奪三振数。「自分はそんなに三振を取れる投手ではない」と語る小島だが、今季ファームで35回を投げ、奪三振は35。特にここ2試合では14回を投げ、17奪三振。しかもその2試合での四球はわずか2つだ。

「低めに、真っ直ぐだったり、変化球だったりを集めるからこそ、たまに投げる高めの真っ直ぐを振ってくれるようになりましたし、低めの変化球で(打者に)バットを出させて内野ゴロになったりとか、ここ2試合は安定していると思います」

 小島は1軍での経験を踏まえ、「あとここから2、3つくらいはステップアップが必要」と自らの力を分析する。ただ、「飛び級しないようにしています。焦らないように」と、一つづつ段階を踏んでのレベルアップを意識して日々取り組んでいる。これもまた、1軍デビュー戦での経験を踏まえて自らが出した結論だ。

「例えば試合で4つミスをしたとして、次の試合でその4つ全部どうにかしようと考えてしまったから、悪い結果になった。西武戦での課題を次の(ファームでの)試合で全部やろうとして、結局、中途半端に終わってしまったので、課題が4つ5つあったとしても、それを1つづつ。次はその1つを『絶対に同じミスはしないように』と、シンプルに考えるようにしてから、うまくいっているのかなと思っています」

「調子が悪い時は寝て、忘れるくらいにシンプルな考え方でいい」

「シンプルに考える――」

 思えば4月4日のデビュー戦。チームは4連敗中、相手は昨年のリーグ覇者・西武、しかも地元・埼玉での試合という色々な要素が重なっていた試合だった。「雑念、ではないんですが、気が散ってしまって」と小島も振り返るように、いろんな思いが混在する中での登板となっていた。そしてファーム落ち当初の試合でも、多くのことを一気に解決しようとした結果、納得のいく投球を見せることはできなかった。そこで行き着いた答えが「シンプルに考える」だった。

 シンプルに考えるように自分を切り替えたのは、課題への対応だけではない。

「西武戦で打たれて、ファームに来た当初は『この打者にはこう投げる』とか『捕手の構えたところに行かないと絶対ダメだ』など、自分を縛り過ぎていたところがありましたが、試合であまり相手と勝負できていなかった。試合の時にはしっかり相手打者に集中し、抑えることだけを考えて、試合が終わってから良くても悪くてもしっかり反省。そして次の課題を見つける。調子が悪い時は寝て、忘れるくらいにシンプルな考え方でいいと、最近は考えています」

 着実に自らのレベルを高めて再び1軍のマウンドへ。そのためにもう一つ意識的に取り組んでいることが「修正力の向上」だ。

「基本的には自分で自分のことを分析できていないといけないと思っています。ボールがもし高めに浮いた時、自分でこうすればいいという引き出しがないと、ただ試合を壊すだけになってしまいます。(1軍で投げる上では)調子が悪い時にどうするかが大事だと思っているので、『ボールが抜けちゃったー、どうしよう。抜けないようにしなくちゃ』という、考え方ではなく、そこで『あ、なんで抜けちゃったんだろう。体が開いていたからかな。じゃあ、もう少し体を閉じて投げてみよう』という考え方ができることが修正力だと思うので、そういうことができるように、今は引き出しを作ることに集中しています」

 悔しい1軍デビュー戦を糧に、日々課題と向き合い続ける小島。着実にひとつずつそれらの課題を乗り越えて、パンパンに詰まった引き出しを持ったルーキー左腕の1軍再登場の日が、今から待ち遠しい。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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