【MLB】上原浩治は「愛され者で、少し変わり者」 地元紙で同僚が語った“人間性”

レッドソックスではクローザーとして活躍した上原浩治【写真:Getty Images】

地元紙「ボストン・グローブ」が引退を発表した上原の特集記事を掲載

 巨人の上原浩治投手が20日に現役引退を発表した。2013年にレッドソックスの世界一に貢献した右腕には、メジャーリーグ関係者からも次々と惜別の声が寄せられている。2013年からレッドソックスの投手コーチを務めるダナ・レバンギー氏は、地元紙「ボストン・グローブ」の取材に対して「素晴らしい人物」「一緒にいて楽しい男」などと振り返っている。

 上原はレッドソックス加入1年目の2013年、レギュラーシーズンでは73試合登板で4勝1敗13ホールド21セーブ、防御率1.09と圧巻の成績をマーク。さらに、ポストシーズンでも13試合登板で防御率0.66と快投し、ア・リーグ優勝決定シリーズではMVPに輝いた。主砲のデビッド・オルティスらとともに、ワールドシリーズ制覇の立役者の一人だった。

 そんな日本人右腕が現役引退を表明したニュースは瞬く間に米国にも伝わり、「ボストン・グローブ」は「現役引退に際し、コウジ・ウエハラは栄誉を受ける」とのタイトルで特集を組んでいる。記事では、上原について「愛され者で、少し変わり者」と表現。そのうえで「一緒に過ごした人に語る(ための)ストーリーを多く残した」としている。

 そこで登場するのが、レバンギー氏だ。2013年からレッドソックスで投手コーチを務める同氏は、上原との「お気に入りの思い出」について、2013年ワールドシリーズだと「即答」したという。いったい、どんな思い出があったのか。

「ウエハラは試合の終盤で登板する時、少し眠かった。彼は頼みがあってレバンギーのところに行った。レバンギー投手コーチ『彼は私に顔を叩くように頼んできたんだ。私は叩いたよ』」

 目を覚まし、気合を入れ、世界一を決める舞台へと上がっていたという。

 レバンギー投手コーチはさらに、同紙の取材に対して、上原がチーム内でいかに重要な存在だったかを力説している。

「大きな役割を果たした。試合終盤で登板する2人が怪我をし、彼がクローザーの役割を担ってからすぐ、チームは安定し、そこから躍進したんだ。ブルペン陣はそれぞれ適した役割を担えるようになった。彼がクローザーになってから、ブルペンは本当に良くなった」

「誰とも楽しむことができ、みんな彼のことが大好きだった」

 セットアッパーとして開幕を迎え、その後、クローザーに就任した上原。ほぼ完璧に役割を果たし、チームを世界一に導いた。四球が極端に少なく、三振を奪える右腕は、このシーズンのWHIP(1イニングあたりの安打+四球)は「0.57」とまさに圧巻の数字を残している。

 レバンギー投手コーチは記事の中で「素晴らしい人物で、素晴らしい才能だった。彼の制球力は誰よりも良かったよ。本当に良い高めの直球を投げていた。常に打者のスイングの上で、スプリットも投げられた。スプリットをゾーンにも、ゾーンの下にも投げられた。だから、高めでも低めでも空振りを奪う素晴らしい選択肢を持っていたんだ」と回顧。さらに、「一緒にいて楽しい男だった。本当にそうだった。いつでも楽しい男だった。誰とも楽しむことができ、みんな彼のことが大好きだった。彼はただ話しやすくて、付き合いやすい男で、当時のチームに上手くフィットしていた」と、上原の人間性もべた褒めしている。

 また、この特集には、ザンダー・ボガーツ内野手も登場。2013年はメジャー1年目の超有望株だったボガーツは、順調に成長して今やレッドソックスに欠かせない選手となった。4年間チームメートとしてプレーした上原との思い出は強烈に残っているようで、自身のインスタグラムでは上原とハイタッチを行う写真など3枚を公開し「コウジ――ミスター・ハイタッチ! すごく良いチームメートだった。素晴らしいキャリアを祝福するよ。オツカレサマ!」と綴っていた。そして、同紙の取材には「13年のチームは彼がいたから大きな成功を収めたんだ」と語っている。

「ボガーツはウエハラについて、セーブを挙げた後のダグアウトやフィールドでの熱狂的なハイタッチや、祝うことがある度にウエハラを持ち上げて肩に抱えるのが好きだったデビッド・オルティスとの凸凹コンビの友情を思い出すと語った」

 ダグアウトでの強烈なハイタッチ、そして、オルティスが試合後に上原を抱え上げるパフォーマンスもまた、多くの人の記憶に刻まれている。ボストンに数え切れないほどの思い出を残した上原。元同僚、地元メディア、そしてファンから今もなお愛されている。(Full-Count編集部)

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