<南風>あきらめない

 読谷村で最終合宿をした7人制ラグビー女子日本代表「サクラセブンズ」がオリンピック出場を決めた。3年前の沖縄初合宿、2回目となる今回の合宿にも帯同する機会に恵まれたが、チーム力の変貌ぶりに驚かされた。アジアでも下位に甘んじていた5年前から、あきらめずに「世界一の練習」を続けてきたチームに敬意を表したい。 フォード・モーター創業者のヘンリー・フォードは「努力が効果を現すまでには時間がかかる。多くの人はそれまでに飽き、迷い、挫折する」と語った。また松岡修造氏は「100回叩(たた)くと壊れる壁があったとする。でもみんな何回叩けば壊れるかわからないから、90回まで来ていても途中であきらめてしまう」という言葉で、あきらめずに最後までやり抜く大切さを語っている。この「あきらめない」というシンプルな言葉には、目標達成の要諦(ようてい)が凝縮されているように思う。

 大学1年の冬、「手術しても、ラグビーをするのは難しいかも」と医者に言われる膝の大けがをした。「俺の人生は終わったな」と自暴自棄になり挫折しかけたが、仲間たちに励まされ踏みとどまった。そして「前例がないなら、自分が前例になる」と気持ちを入れ替え、手術とリハビリに挑んだ。リハビリは心身ともに過酷を極めたが、幸運にも1年後に復帰することができた。そして、このあきらめなかった経験が私の人生観を大きく変えた。 

 人生はいろいろな困難や逆境に直面するが、それをどう解釈するかは自分次第だ。ピンチと捉えるかチャンスと捉えるかで、その後の人生が大きく変わってしまう。どんなつらい状況でも「これは自分にとって意味のあることなんだ」「この経験から何を学べるだろうか」と前向きに捉え、あきらめずに行動できれば、人生はきっとそれに応えてくれる。

(安村光滋、県ラグビーフットボール協会理事長)

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