2019年の鈴鹿8耐に挑むヤマハYZF-R1の開発状況。エンジンは「パワー、燃費も一回り大きく進歩」

 5月22日、ヤマハは7月25日~28日に鈴鹿サーキットで開催されるFIM世界耐久選手権(EWC)最終戦、鈴鹿8時間耐久ロードレースの参戦体制を発表。この発表会のなかで辻幸一MS開発部長とチームを率いる吉川和多留監督が、鈴鹿8耐を戦う2019年型ヤマハYZF-R1の開発状況とレース戦略を明かした。

 2019年は、1985年の鈴鹿8耐に参戦したヤマハTECH21(テック21)チームの復刻カラーをまとったYZF-R1で鈴鹿8耐5連覇に挑むヤマハ。ファクトリー体制のYAMAHA FACTORY RACING TEAMは、鈴鹿8耐4連覇を果たした中須賀克行、アレックス・ロウズ、マイケル・ファン・デル・マークの布陣を継続して参戦する。

ヤマハTECH21チームの復刻カラーをまとったYZF-R1
アンダーカウルに掲げられた資生堂とテック21のロゴ

 使用するマシンは、2015年にフルモデルチェンジを果たした8代目YZF-R1で、同モデルは2019年で5年目を迎える。

 会場に登場した辻部長は「2015年にファクトリー活動を再開して以来、鈴鹿8耐で4連覇を果たしていますが、楽に勝てたレースはひとつもありません。ご支援いただいてるスポンサーのみなさま、チーム、スタッフ、会場に来られるファンの声援で、4連覇を成し遂げられたものと考えています」とあいさつし、マシンの開発状況を説明した。

「(YZF-R1の)現行モデルでの参戦は今年で5年目を迎えることになります。5年目ということで古いと感じるとは思われますが、そうではありません。まだまだR1は進化を続けています」

2019年型はエンジンのパワー、燃費、信頼性が向上しているという。

「エンジンに関しては、パワー、燃費も一回り大きく進歩させ、それに伴う信頼性も確実なものにしています」

「車体については、マシンのバランスを少し変えることができ、タイヤによりやさしいマシンに仕上げることができたため、昨年と比べ、より安定したタイムを刻むことができると確信しています」

「ピットワークについては、これまでの経験を活かして現在もなおコンマ1秒を短縮するために日々努力しているところです」

2019年の鈴鹿8耐を戦うヤマハYZF-R1

 2019年の鈴鹿8耐は2年目を迎えるホンダのファクトリーチームや、今年復活を果たすカワサキのファクトリーチームがヤマハの5連覇阻止を狙っている。このことにつていは「2019年の鈴鹿8耐はライバルチームとの競争が例年にも増して激化していると感じています。少しのミスもゆるされない状況というのが言わずもがなです」と辻部長。

「そういうなかで、ヤマハの最大の強みというのは熟成したYZF-R1。そして、どこにも負けないチームワークの良さ。これにつきます」

「マシン、チームが一丸となって5連覇を目指す。さらに、中須賀選手も好調を維持しています。鈴鹿8耐に向けては、ギヤを1弾も2弾上げて合わせてくれると信じています」

 また、2019年の鈴鹿8耐を制するために、決勝レースは220周という周回数を目標に掲げているという。

「(鈴鹿8耐では)219周が優勝ラインと考えて取り組んできましたが、ライバルチームがパフォーマンスを上げてきたため、219周では厳しいのではないかと感じています。今年は220周というのをひとつの目標に掲げて我々は努力をしてきました。非常に高い目標だと思いますが、これをなしえず優勝はないと考えています。それだけの意気込みで我々は5連覇に向けて取り組んでいます」

■「昨年以上にシビアな戦いになる」と吉川監督

 ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームを率いる吉川監督は2019年の鈴鹿8耐を戦うYZF-R1に関して次のように話した。

2019年の鈴鹿8耐を戦うヤマハYZF-R1

「マシンのバランスもパッケージとしては悪くなく、今までだとライバルに対してアドバンテージがありました。ですが、他メーカーが戦闘力を上げてきたので、しっかりと(マシンを)追い込まないと厳しくなってきました。そのため、マシンをもう一度見直し、いままでの改善点をみいだしたところです。そうすると一時的にバランスが崩れるので、全日本(ロードレース)にも影響しました。それが完成してくると昨年以上のパフォーマンスが出せる車両になるといったところです」

「(2019年型YZF-R1のエンジンに関して)エンジンをパワーアップさせれば、その分(パワーを)絞っても(昨年と)同じ速さをキープしながら燃費も稼げる。少し燃費が良くなれば、いろんな助けになりますし、加速もよければ抜くときのリスクも減る。マシンは高いレベルにあるので、そこから細かく調整しています」

「8時間トータルで考えると細かい積み重ねでライダーの負担を軽減させられるので、本当に少しの積み重ねです」

2019年の鈴鹿8耐を戦うヤマハYZF-R1
2019年の鈴鹿8耐を戦うヤマハYZF-R1

 また、吉川監督は2019年の鈴鹿8耐は昨年以上にシビアな戦いになると予想している。

「勝つための目標設定をし、それを実現するための努力を重ねています。それを大幅に凌駕するような結果を相手が出してきたときは厳しいことになります。スプリント並みの8時間というところで、ほんの少しのミスですべてがなくなてしまうので難しいですね。今年の鈴鹿8耐は、昨年以上にシビアな戦いになるという予想はしているので、気を引き締めて優勝を狙いに行きます」

 テック21の復刻カラーをまとい、ヤマハは鈴鹿8耐5連覇を達成することができるか。2019年の鈴鹿8耐は、7月28日に決勝レースが行われる。

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