アルゼンチンの人気シリーズ『STC2000』第3戦でトヨタがワン・ツー。ルノーの連勝止める

 2019年シーズンから新たに直噴4気筒ターボのワンメイクエンジンを採用し、新時代を迎えている南米アルゼンチンの人気シリーズ、スーパーTC2000(STC2000)の第3戦が、サンフアン州の新設トラック、エル・ビリクムで初開催。開幕から連勝中のルノースポール勢を予選で退けたTOYOTA GAZOO Racing YPF Infiniaのエース、マティアス・ロッシ(トヨタ・カローラ)がそのままポール・トゥ・ウインを飾り、2位に入ったジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラ)とともにトヨタがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。

 5月18~19日に開催された2019年STC2000シリーズの第3戦は、全長4.266kmを誇るエル・ビリクムが舞台。同トラックは2018年10月にスーパーバイク世界選手権(SBK)でこけら落としを迎えた新設サーキットだ。

 ここまで開幕から2戦続けて圧倒的強さを見せてきたのは、ルノースポールのディフェンディングチャンピオン、ファクンド・アルドゥソ(ルノー・フルーエンスGT)と、その僚友リオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)で、とくにペーニャはチャンピオンを従えての2戦連続ポール・トゥ・ウインと、破竹の勢いを見せる。

 しかし、誰に取ってもデータのないこの新設トラックではその状況が一変。雨上がりのダンプ路面という難コンディションの予選で、そのペーニャが8番手止まりの番狂わせが起こると、今季より導入の上位6台による“スーパー・クオリファイ”に進んだ王者アルドゥソも5番手確保が精一杯という状況に。

 かわって速さをみせたのはTOYOTA GAZOO Racing YPF Infiniaの2台で、とくに予選では開幕からルノー勢に割って入る健闘を見せていたサンテロがペースセッターとなり、セッション終盤までタイムボード最上位を堅持していた。

 しかし、ここで意地をみせたのが長年トヨタのエースを務めるロッシで、最終アタックで1分48秒708の最速をマーク。チームメイトに対しわずか0.020秒差でアウトクオリファイし、今季初、そしてトヨタにとってオレカ製ターボでの初ポールを獲得することになった。

 フロントロウを独占したトヨタ勢に続き、3番手には2016年王者のアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)が入り、4番手にも同じくシボレーのベルナルド・レイバー(シボレーYPFクルーズ)と、“赤対青”の2列並びに。

 5番手王者アルドゥソ、6番手には復調の兆しを見せるシトロエン・トタル・アルゼンティーナのファクンド・チャプル(シトロエンC4ラウンジ)までがスーパー・ポール組となり、7番手以下はマティアス・ミラ(ルノー・フルーエンスGT)、ペーニャ、ホセ-マニュエル・ウルセラ(ホンダ・シビックSTC2000)、マティアス-ムニョス・マルケージ(フィアット・ティーポSTC2000)のトップ10グリッドとなった。

開幕2戦で予選、決勝ともに完全制圧の勢いを見せたルノースポールは、初開催サーキットと天候に翻弄される
選手権リーダーのリオネル・ペーニャも予選でスーパー・クオリファイ進出を逃すまさかの展開に
一方で復調の兆しを見せたのがシトロエンC4ラウンジのファクンド・チャプル。予選でも6番手を獲得する
スタートでの大波乱を受け、急遽ローリングスタートが切られたエル・ビリクム戦はトヨタ勢が盤石のホールショット

 現地日曜正午にスタートを迎えた24周、レース時間50分の決勝は、スタートで波乱が巻き起こる。

 フロントロウから無難なクラッチミートを見せたトヨタ勢に対し、後方ではシボレーのカナピノ、そしてルノーの王者アルドゥソと2台のマシンがまさかのストール。そのうちの1台であるチャンピオンマシンの背後に、トップ10圏外からジャンプアップしてきたフィアットDTAレーシングのエース、マリアーノ・ウェルナー(フィアット・ティーポSTC2000)が避けきれずに追突。

 さらに弾かれたルノー・フルーエンスGTのテールに10番手から発進した同じくフィアットのマルケージがクラッシュする多重アクシデントとなり、いきなりのレッドフラッグとなってしまう。

 幸い全ドライバーの無事が確認され、マシンの撤収とホームストレート上の清掃が終わると、レースはローリングスタートで再開。リスクの少ない先頭走者となったトヨタ勢は隊列をコントロールしながら首位をキープすると、スタンディングでストールしながらも九死に一生で復帰することができたカナピノが3番手を守ってオープニングラップを消化していく。

 その僚友レイバーも4番手を走行するも徐々にペースが落ち始め、シトロエンのチャプル、ルノーのミラに相次いでかわされていく。

 すると4周目にはカナピノのマシンにも異変が襲い、オレカ製ワンメイクエンジンはECUトラブルを抱えたか3000rpmより上に吹けない症状が発生し、そのままコース上にストップしてしまう。

 これでマシン回収のためふたたびセーフティカーが導入されると、リスタートでは表彰台争いを繰り広げたシトロエンvsルノーの争いが激化し、ルノースポール3人目の男、ミラがシトロエンを仕留めて3番手に浮上する。さらにその直後、チャプルのC4ラウンジにもトラブルが降りかかり、ステアリングトラブルから戦列を去ると、選手権リーダーのペーニャが労せずして4番手を手に入れることに。

 多くのアクシデントが発生したレースは23周終了でチェッカーとなり、トヨタのロッシ、サンテロの2台は波乱を尻目に盤石のワン・ツーを達成。3位にルノーのミラ、4位にもペーニャが入り、5位6位にはホンダ・レーシング・アルゼンティーナのウルセラ、リカルド・リサッティの2台が続き、ホンダ・シビックSTC2000がデビュー以来のベストリザルトを獲得している。

 続く2019年STC2000シーズン第4戦は、同国第3の都市であり、北西部サンタフェ州最大の交通要衝でもある工業都市ロサリオのトラックを舞台に争われる。

ライバルの脱落に助けられる形で、マティアス・ミラ、リオネル・ペーニャが3〜4位に入った
ホンダ・レーシング・アルゼンティーナのシビックSTC2000は、ファン-アンヘル・ロッソも9位に入り、3台がトップ10入賞を果たした
58ポイントでランク首位のリオネル・ペーニャに対し、ジュリアン・サンテロが37ポイントでランク2位に浮上している
勝利を挙げたマティアス・ロッシも、王者アルドゥソと並ぶ選手権4位につけた

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