広島・大瀬良が握る4連覇へのカギ

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、5月22日の中日戦で完投勝利を挙げ、チームを9連勝に導いた広島のエース・大瀬良大地投手のエピソードを取り上げる。

【プロ野球広島対中日】1回 先発の広島・大瀬良大地=2019年5月22日 マツダスタジアム 写真提供:産経新聞社

「先発でマウンドに上がる以上は、最後まで投げたい、という思いで毎回上がっているので。最後まで投げきることは、先発としては最高の形だと思います」

5月22日、マツダスタジアムで行われた広島-中日戦。前日の21日、今季2度目の8連勝で、巨人を抜いて今シーズン初の単独首位に立った広島ですが、さらに連勝を伸ばして首位固めを図りたいこの試合、指揮官がベンチにいませんでした。

緒方監督の実父が亡くなり、1試合だけ高ヘッドコーチに指揮を託すことになったのです。指揮官不在は、練習前にナインにも伝えられましたが、先発を任された大瀬良は、平常心を忘れませんでした。

「監督が掲げられている野球をしっかりやることが、僕たちができること。とにかく守り勝つ野球を、と思ってマウンドに上がりました」

今季ここまで、中日戦では2試合連続で完投勝ち。うち1つは完封と相性のいい相手でしたが、この日も真っ直ぐを主体に、力で押すエースらしいピッチングを披露。とりわけ圧巻だったのは、2回・3回の「6者連続空振り三振」です。

「ボール球を振ってくれて、空振りも多かった。アツさん(捕手・會澤)もメインで要求してくれたので、調子がいいのかなと迷うことなくいけました」

力のあるストレートに、変化球も効果的に織り交ぜ、中日打線を翻弄。6回一死までランナーを1人も許さないパーフェクトピッチングで、記者席からは「完全試合、やるんじゃないか?」という声も挙がったほどです。

6回、加藤に初安打を打たれ、7回にはビシエド・高橋の連打で1点を失いましたが、許したヒットはその3本だけ。9回もマウンドに上がり、91球、3安打1失点の完投勝ちで、今季4勝目を挙げました。チームも、今季最長の9連勝。この日敗れた2位・巨人との差を1.5ゲームに広げたのです。

代行で指揮を執った高ヘッドコーチは「相手を圧倒する立ち上がりだった。素晴らしい」と大瀬良のピッチングを絶賛。台所を預かる佐々岡投手コーチも「真っ直ぐが良かった。カットボールもキレキレだった」とエースを讃えました。

先月「借金8」で泥沼の最下位に沈んでいたカープは、いつの間にか「貯金8」で首位に。このV字回復は、打線の復調はもちろん、4月半ばまで防御率4点台だった投手陣が、リーグトップの「2.97」(22日現在)と劇的に立ち直ったことも大きな理由です。

現役時代、先発と抑えの両方で活躍した佐々岡コーチは経験上、3連覇を支えたリリーフ陣をこれまでと同じように回していては、いつかパンクするという危機感を持っています。

4連覇のカギは、すなわち「先発にできるだけ長く投げてもらうこと」。5月8日の中日戦、終盤リリーフに頼らず、1点差で完投勝ちした大瀬良について、佐々岡コーチはこうコメントしました。

「7、8、9回の投球だよね。エースとしてチームを支えてくれている。苦しいときでもこういう投球をしてくれる」

昨季、広島のチーム完投数はわずか「3」。しかし今季は、今回の大瀬良の完投勝ちで「5」と、すでに昨年を超えています。まさに大瀬良は“孝行息子”。

「最後まで1人で投げきる」という姿勢は、バックを守る野手たちに「俺たちが援護してあげないと」という気持ちを起こさせ、それが打線の好調にもつながっているのです。

試合後のお立ち台で、ヒーローインタビューの直後に鈴木誠也と西川から、氷が入った水を浴びせられた大瀬良。投手に対して、野手がこういう手荒い祝福をするのは珍しいことですが、チームの一体感を象徴するシーンでもありました。

「急に歓声が大きくなったので、何かあるのかなと思った。もうアイシングが終わっていたので良かった(笑)」

24日からは、敵地・東京ドームに乗り込んで巨人と首位決戦。エースの活躍で意気が上がるカープをジャイアンツは止められるか? 前半戦の大きな山場になりそうです。