岡山県が子宮頸がんワクチン啓発 有効性やリスク、判断情報を提供

©株式会社山陽新聞社

伊原木知事(右)に要望書を手渡す本郷部長

 原則無料の定期接種の対象であるものの、健康被害の訴えを受けて国が接種の積極的な呼び掛けを中止している「子宮頸(けい)がんワクチン」について、岡山県は本年度、ワクチンの有効性やリスクを独自に周知する事業を始める。情報が行き届いていないとみられる中、対象者にワクチンの存在に目を向け、予防のための選択肢の一つとして考えてもらう狙い。

 ワクチンは2013年4月に定期接種となった。日本産科婦人科学会によると、健康被害の訴えが相次いだことから、一時70%ほどだった全国の接種率は1%未満に落ちている。県は接種の是非以前に、それを判断するための情報の不足が問題と考え、発信を計画。本年度当初予算に検診の啓発事業を含む関係経費368万円を盛り込んだ。

 今月以降、産婦人科医らの協力を得て、チラシの作成・配布やイベントでのブース設置などに順次取り組む。保護者や保健教諭の会合への講師派遣、メール相談機能があるホームページの開設も予定している。有効性とともに全身のしびれ、頭痛や発熱といった副反応のリスクを伝え、起きた際に相談できる県内の2医療機関も紹介する。

 県によると、他県での同様の取り組みは把握しておらず、接種事業の主体となる市町村の動きも県内では見られないという。

 厚生労働省のまとめでは、子宮頸がんワクチンを巡り、17年8月末までに全国で3130人から副反応(疑いを含む)の報告があった。国や製薬会社に損害賠償を求める訴訟も起きている。県によると、県内では14年11月~17年3月に16人が副反応の相談で医療機関を受診した。

 国立がん研究センターによると、子宮頸がんは近年、全国で毎年約1万人が発症し、約3千人が死亡。県内では発症者156人(15年)、死者36人(同)とのデータがある。県内を含め全国で20~30代の患者が増える傾向にある。

 県の方針について、厚労省感染症課は「県の判断でありコメントできない」とする。伊原木隆太知事は「県が接種を推奨する立場にはないが、十分に情報がなければ県民は判断ができない。市町村の協力も得ながら考える機会を提供していきたい」と話している。

 子宮頸がんワクチン 子宮頸がんの原因の5~7割を占めるタイプのヒトパピローマウイルスの感染を防ぐ。2009年12月に販売が始まり、厚生労働省は13年4月、小学6年~高校1年相当を対象に定期接種としたが、健康被害の訴えを受けて2カ月後に呼び掛けを中止した。接種と被害との因果関係は報告されていないが、呼び掛けは再開していない。県によると、県内の定期接種の対象者は約5万人(昨年10月現在)。

県産婦人科医会などが正しい知識の普及を県に要望

 岡山県産婦人科医会などは23日、子宮頸がんワクチンの接種率回復に向けた正しい知識の普及などを求める要望書を伊原木知事に提出した。

 要望書は、同医会、県産科婦人科学会、県医師会産婦人科部会、医師でつくる「子宮頸がんゼロプロジェクト岡山」の4団体の連名。検診のさらなる普及啓発などを含めた4項目を盛り込んだ。

 本郷淳司・川崎医科大総合医療センター産婦人科部長ら5人が県庁を訪問。知事や職員との懇談もあり「検診で発見、治療できても手術の後遺症や子宮摘出の可能性があり、予防が大切」「『ワクチンが公費助成と知っていたら接種した』という患者がいる」などと訴えた。