組員の特殊詐欺で責任 水戸地裁、住吉会幹部に賠償命令 暴対法初適用

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指定暴力団住吉会系組員らによるニセ電話詐欺(特殊詐欺)事件の被害に遭った県内の女性3人が、暴力団対策法(暴対法)が規定する使用者責任に基づき、住吉会の関功会長と福田晴瞭幹部に計約715万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、水戸地裁であった。前田英子裁判長は3人のうち2人に対する605万円の賠償を関会長らに命じた。暴力団が絡むニセ電話詐欺の被害者救済に新たな道筋を開く判決となった。

暴対法は2008年施行の改正で、指定暴力団の組員が威力を利用した資金獲得行為で他人の生命や身体、財産を侵害した場合、トップらが損害賠償責任を負うと規定している。被害女性側の代理人によると、ニセ電話詐欺事件で暴力団トップに暴対法の使用者責任を適用したのは全国で初めて。同種の訴訟は東京地裁でもあり、24日に判決が予定されている。

前田裁判長は判決理由で、組員が被害女性に直接威力を使わなくても、受け子など共犯者集めの過程で暴力団の威力を利用していれば、暴対法上の使用者責任が生じると指摘。今回の事件は、組員が暴力団と恐れられていることを利用して知人の男に受け子を探させ、詐欺を実行したことから、暴力団の威力を利用した資金獲得行為に当たると結論付けた。

組員と知人の男、当時大学生だった受け子の計3人は、詐欺などの罪に問われ、水戸地裁で有罪とされた。

判決などによると、被害女性3人は16年7月から8月にかけ、自宅で電話を受けた際に親族を装った人物から「金が必要だ」などと持ち掛けられた。3人のうち2人は計500万円をだまし取られたが、1人は現金を渡していなかったことから、請求を棄却した。

被害女性側の代理人の一人、小沼典彦弁護士は「暴力団が関与した特殊詐欺の撲滅や被害防止につながるとともに被害者救済の幅も広がる」と判決の意義を説明。「やっと救済できた」とほっとした表情を見せた。

同種の訴訟では、指定暴力団極東会傘下組織の組員に金をだまし取られた男女が極東会元会長に損害賠償を求め、東京地裁が16年9月の判決で暴対法上の使用者責任規定を適用せず、民法上の使用者責任を認定した例がある。

住吉会は東京都港区に本部を置き、18年末時点で構成員は約2800人に上る。山口組に次ぐ2番目の規模で、勢力は18都道府県に及ぶ。(海老沢裕太郎)

★暴力団対策法の使用者責任
民法は、雇われた人が事業の執行で第三者に損害を与えた場合、雇い主が賠償責任を負うと規定している。最高裁は2004年11月、山口組の下部組織の組員が対立抗争で警察官を誤射した事件で、山口組トップの使用者責任を認定した。08年の改正暴力団対策法では、指定暴力団の代表者に対し、組員が暴力団の威力を利用して資金を獲得する際、他人の生命や財産を侵害した場合にも賠償責任を負うと定めた。指定暴力団トップの責任追及が容易になった。