61回超でわずか8四球 2軍で好投するロッテ3年目左腕を変えた大隣コーチの一言

ロッテ・土肥星也【写真:荒川祐史】

ロッテの土肥は今季イースタン・リーグでリーグトップの6勝をマーク

 ロッテの2軍では先発左腕たちが好調だ。1勝ながら防御率2.03でリーグ1位に立つドラフト3位の小島和哉、現在リーグ2位タイの4勝を挙げ、防御率3.47もリーグ4位のドラフト5位の中村稔弥、そして、現在リーグトップの6勝を挙げているのが、今季3年目を迎えた左腕の土肥星也だ。

 2軍で開幕からローテーションを守り、ここまで10試合で6勝1敗。防御率3.23もリーグ4位と、好成績を残している土肥は「1軍だったら嬉しいんですけど」と、数字について、少し照れ臭そうに答えた。

 今季2軍では全て先発として10試合に登板。突出するのは四球の少なさだ。昨年は先発リリーフ併用での起用で16試合に登板。62回を投げて四球数は23。しかし今季は5月23日現在、イースタン・リーグ最多の61回1/3を投げながら、四球数はわずか8。規定投球回到達者の中で、リーグ唯一の一桁と圧倒的な制球力を誇る。昨季から大幅に数字を向上させているのは明らかだが、そこにはこんな理由があった。

「去年はどちらかというと上半身で投げていた部分がありました。今は下半身主導で投げるというのがあるので、それでコントロールが良くなったと思います」。ただ、制球力のために下半身主導を意識したわけではない。「ボールを強くすることが目的でした。あとは上半身主導だとすぐに疲れてしまう。そのためにしっかり下半身を使って、上半身をできるだけ使わないという形をと去年のオフから取り組んでいます」というのだ。

 下半身主導の投球。そこを見直すきっかけは、昨年秋から2軍投手コーチに就任した大隣憲司コーチからの言葉だった。

オフの取り組みの成果を実感「そんなに球威も落ちずに投げられます」

「アドバイスというか、上半身が突っ込んでしまうというところがあったので、もうちょっと下半身を意識して体重移動をしっかり、そこの時間を長く使えるようにしていけば、もっと今持っているボールの球質が生きてくるんじゃないか」。大隣コーチは、土肥にそんな話をしたという。

 そして、こうも続ける。「それ以外は特に何も言っていない。(土肥が)自分で感じながらやってきたことが今の結果につながっていると思う。このまま自分自身で考えながら、継続してやってくれればいい」と、新任コーチは若い左腕の成長に目を細めていた。

 コーチの助言をきっかけに、秋のキャンプからシーズンオフ、意識的に下半身のトレーニングを行い、いい状態でキャンプを過ごすことができたという土肥。その効果は自分でも実感している。

「全然違います。(去年までは)5回、6回なったら疲れが出てきて、球威とかも落ちて、腕も張ってきちゃっていました。今は張ってくる時もありますが、そんなに球威も落ちずに全然投げられますし、張らないときもあります。コントロールとかも自分の投げたいところに投げられてるなと感じています」

 自身の狙い通りにボールの強さも向上し、上半身への負担軽減。そして、その副産物として制球力、投球のスタミナも向上と、下半身がしっかりしたことで全てが好結果につながっている。

意識する同じ若手左腕の存在「負けたくないという気持ちはあります」

 現在、ロッテの1軍ローテーションは涌井、岩下、種市、二木、ボルシンガー、石川と6名が確立されている。2軍で6勝をあげる土肥には、なかなかチャンスが回ってこない状況だが「結果を出し続けるしかない」と、覚悟を決めて、日々を戦い続けている。

 23日の西武戦でも6回1失点と好投した。それでも、「途中で2ストライクと追い込んでから、甘い球を打ち損じてくれていたりとか、序盤もボール先行する場面があった。1軍では危ない、というところもたくさんあったので、そういうところをしっかり突き詰めていかないと」と、来るべき1軍での登板を想定しながら、自身の投球を反省するなど準備を怠らないようにしている。

 ロッテはここ数年、左腕の先発ローテ投手不足が続いているが、土肥のほかにも、ルーキーの小島、中村稔も、その枠へ向けアピールと続けている。「やはり負けたくないという気持ちはありますが、左ということで僕も参考にしたりすることもあります。体の使い方を聞いてきたりもするので、下半身や膝の使い方など、フォームの話とかも、たまにしています」と、ライバル視はしながらも、ともに同じ場所を目指す仲間として、いい刺激を受けているという。

「酒居さん、種市とかが1軍で投げて活躍していて、僕も早く追いつくというか一緒に投げたいという気持ちがあります」と、同じ2016年ドラフト入団の同期が活躍する1軍の舞台への思いを語る土肥。

「1軍が良くない時に僕も良くなければ、やはり呼ばれない。その時に僕もしっかり調子を維持していられるように、まずはコンディションだったり、投球フォームなどをこの調子で維持していきたいと思います」

 来るべき日のために自らを磨き続けるロッテの若き左腕たち。彼らが1軍のマウンドで輝く日が楽しみでならない。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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