4年前の教訓生かせ 箱根規制1週間、速く正確に情報発信

多くの観光客らでにぎわう箱根湯本駅前 =25日、箱根町湯本

 箱根山(箱根町)の噴火警戒レベル2(火口周辺規制)への引き上げに伴い、大涌谷園地が立ち入り規制されてから26日で1週間となる。観光客が減少し混乱も生じた2015年のレベル引き上げ時に比べると、大きな影響は見られず、冷静に受け止められているようだ。町や関係機関などは4年前の教訓を生かそうと、マニュアルなどを作成。関係者は「正しい情報をすぐに発信する」ことに主眼を置き、対応に当たっている。

 「(レベル引き上げは)初めての経験で、情報収集の初動が遅かった。発信もばらばらで混乱が生じた」と4年前を振り返るのは箱根DMO(箱根町観光協会)の佐藤守専務理事。引き上げられた今月19日は午前5時に町から連絡を受け、数分後には幹部に連絡した。情報収集を急ぎ、同9時から行ったミーティングでは、今後の対応を確認した。

 同10時までにはホームページで、箱根ロープウェイが全線運休になっていることや大涌谷周辺以外のエリアは規制の対象になく、平常通りであることを告知。メンバーや各地区の観光協会には、電話やメールで収集した情報を伝えた。

 地区ごとの観光協会でもスピード感ある対応が取られた。

 箱根強羅観光協会は交通規制情報などを集め、午前8時から8時半にかけて会員の旅館やホテルなど約160施設にファクスで現状を伝えた。「チェックアウトは午前10時。それまでに宿泊施設に情報を流さないと、お客さんにアナウンスできない」と同協会の田村洋一専務理事。

 同協会では独自の避難マニュアルやマップを作成しており、4年前と同様にレベル3(入山規制)に引き上げられた場合などには一時避難場所などを示すマップを強羅駅周辺などに張り出し、影響を最小限に食い止める構えだ。

 箱根温泉旅館ホテル協同組合でも、宿泊施設がスムーズに避難誘導できるよう、町のマニュアルなどを基に「火山噴火対応マニュアル」を17年3月に作成した。宿泊客や従業員の安全を守る行動のほか、休業した場合に宿泊キャンセル客への営業再開情報の提供など、経営の指針を含めて記載。組合に加盟する100以上の宿泊施設に配布しており、同組合の川口將明事務局長は「宿泊客に正しく状況を周知するためにもマニュアルを活用してほしい」と話す。

 大涌谷でごく小規模な噴火が起きた4年前は、「箱根全体が危険」とのイメージが広がり、観光客が大きく減少した。町や県は今回、規制エリアが箱根全体のごく一部であることをいち早く打ち出した。

 町観光課の担当者は「大事なのは(観光客が)安心して箱根を楽しんでもらえること。そのためにも正しい情報を発信し、情報を共有していきたい」と気を引き締めている。

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