「やられっ放しでいられるか」北朝鮮の女性兵士ら性虐待受け脱走

北朝鮮では、軍内部での女性に対する性暴力が後を絶たない。金正恩党委員長も軍における性暴力の根絶を指示しているが、状況が改善する気配はない。そんな中、軍では被害に遭った女性兵士の脱走が相次いでいるとされる。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、3ヶ月ほど前に道内の平原(ピョンウォン)に駐屯する教導旅団から3人の女性兵士が脱走したが、最近になって逮捕されたと伝えた。

連行され取り調べを受けた3人は、脱走の理由について「男性の上官の性暴力」が原因だったと陳述した。これを受け、軍内部には衝撃が走っているという。

北朝鮮では、性暴力の被害に遭った女性がむしろ責められることが多い。

つまり「行動や言動に問題があった」「女性から誘ったに違いない」「女は嫁に行けば済むが、男には養うべき家庭がある」などの言葉で女性被害者を追い詰めるという、二次加害・被害が起きているのだ。

女性たちはそれを恐れ、被害を告発するよりは隠そうとするのが一般的だった。本人が暴露しようとしても、家族が止めるケースもあった。

ところが、今回は違った。女性は被害に遭った事実を語ったのだ。自主的に明らかにしたのか、取り調べ過程での拷問などに耐えかねてのものなのかは定かでないが、被害者が沈黙せず、「脱走と証言」に動いたことに、軍の幹部らは少なからず衝撃が受けているもようだ。

「性的虐待やハラスメントは黙殺するものだと考えてきたが、今では考えが変わった。最近入隊してくる世代は、以前とは異なり、政治的利益のために性を捧げるべきだとは考えない」(情報筋)

軍内部では、上官が女性の部下に「労働党に入党させてやる」などと持ちかけ、性行為を迫る「マダラス」や「書類整理」と呼ばれる行為が広範囲に行われてきた。女性もそれを嫌々ながら受け入れてきたが、今の若い世代にはもはや通じないということだ。

意識の変化は若い世代だけにとどまらず、娘を軍に送り出した親たちの間でも起きつつある。

かつては娘が上官から性暴力を受けても、心を痛めつつも「しかたがない」と忘れようとする親が多かったが、今では許されないという意識が広がりつつある。

© デイリーNKジャパン