クルマ、タイヤ、ドライバー。三位一体の戦闘力アップが繋がったHOPPY 86 MCのポール獲得。決勝でも強みあり《GT300予選あと読み》

「明日はポールポジション獲っちゃおうかな~!」

 まだ強い日射しが照りつけていた鈴鹿サーキットのピットレーンのいちばん1コーナー寄りで、そう語っていたのはHOPPY 86 MCの土屋武士監督だ。もともと、鈴鹿は軽量でコーナリングを得意とするJAF-GT車両にとって非常に相性がいいコース。それに加え、タイヤの手ごたえも感じていた土屋監督から出たのが前述のセリフだ。

 果たして、5月25日に行われた公式予選では、佐藤公哉がQ1を、そして松井孝允がQ2を担当し見事“有言実行”のポールポジション獲得を果たした。土屋監督によれば、クルマ、そして今季開幕前から作り上げてきたタイヤ、そして松井というファクターが揃ってのポール獲得だ。  

 今季に向けて、チームは何よりも“結果”にこだわる姿勢をアピールしてきた。これまでは人を育てることを重視していたが、それに加えて結果を出すことも重視した。また今季は「記事にしてほしい」とはひと言も言わなかったが、予算面でシーズン最終戦まで戦えない可能性もあった。現役時代から土屋を支えてきたホッピーの石渡美奈代表の英断により、スポンサードの増額が決まったばかりのこのポール獲得は、何よりも恩返しになったと言えるだろう。

 また、土屋監督は今回「大きい」こととして、ふたつを挙げている。ひとつめは、松井がポールタイムを叩き出したことを挙げている。実は松井は、スポーツランドSUGOとタイは得意だったが、「ドライバーが稼がないといけないコース(土屋監督)」である鈴鹿は、決して得意とはしていなかった。しかし松井自身がオフにF3マシンを自費で借りて鈴鹿を走り込んだりと努力をしてきた。それが実ったポール獲得だからだ。

 そしてもうひとつが、昨年優勝を飾り、鈴鹿では最も倒すべき存在であるK-tunes RC F GT3を打ち破ってポールを獲得したこと。レクサスRC F GT3が得意とする鈴鹿で、ブリヂストンのパフォーマンスも相まって昨年強さを発揮したが、クルマとタイヤ、そしてドライバーの力で僅差とは言えポールを奪ったことはやはり大きい。

 土屋監督がさらなる恩返しをするには、やはり優勝を飾るしかない。土屋監督はあえて決勝の作戦には触れていなかったが、おそらく“伝家の宝刀”といえるタイヤ無交換作戦を採ってくるだろう。一方で、この鈴鹿を得意とするK-tunes RC F GT3、そして同じパッケージを使うADVICS マッハ車検 MC86 マッハ号、さらにSUBARU BRZ R&D SPORTというライバルたちがいかなる作戦を採ってくるかが大いに気になるところだ。

 とはいえ、このHOPPY 86 MCには強みもある。それは松井が「今回はドライバーとエンジニアがしっかり“会話”できるクルマになっている」と語るとおり、昨年までとはセットアップが変わっていることだ。

 土屋監督は今季、ドライバーとして公式テストや第2戦富士で実際にマシンをドライブした結果、「これは違う」とHOPPY 86 MCに対して気付いたのだという。それは、ここ1~2年でセットを進めていた結果、決勝レースでは扱いづらい、繊細なマシンになっていたというのだ。それを今回、速さは保ちつつもより扱いやすい、「しっかり“会話”できるクルマ」の方向に変化させているのだという。

ピット内には“リベンジホピ子”のパネルも

 この強みが決勝でいかに発揮され、ピット内に飾ってあるとおり“リベンジホピ子”が実現するのか。そしてK-tunes RC F GT3をはじめとしたライバルたちがそれを上回ってくるのか。ある意味300kmのレースは力勝負。明日は暑く、熱い戦いが展開されそうだ。

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