【バスストップ】街の和牛アーチスト 創業63年、横浜

ケーキ店のショーケースを転用・特注し、黒毛和牛のブロック肉を陳列する中山さん =横浜市緑区長津田

 長津田(ながつた)駅の南口から徒歩数分の街中にある中山肉店(横浜市緑区長津田)は、創業63年の老舗(しにせ)。同店が素材選びから加熱時間や温度までこだわって仕上げたローストビーフが人気だと聞き、足を運んでみた。

 店内に入り、奥(おく)のショーケースを見て驚嘆(きょうたん)した。中にある黒毛和牛のブロック肉が、華(はな)やかに輝(かがや)いて見えるのだ。3代目店主の中山正人(まさひと)さん(46)は「ケーキ店が使うショーケースを転用し、特注で作りました」。ケーキやスイーツを並べる店で、どれを買おうか見ながらワクワクするショーケースを、肉の陳列(ちんれつ)に取り入れた斬新(ざんしん)な発想だ。内部温度は0度程度を保つ。

 牛肉は国内の畜産(ちくさん)農家に出向き、生きた牛やその飼料などを目で見て、肉質の良い雌(めす)の黒毛和牛だけを1頭単位で買い付けるそう。部位ごとに切り分けるほか、「部位を混ぜて切るとよりおいしいのでは」と模索(もさく)。中山さんは自分の仕事を「黒毛和牛アーチスト」と命名した。

 店や商品の情報はウェブサイトで発信し、「同業者もよく見ています」。全国の精肉店が中山さんの取り組みに注目し、その手法を導入する店も多い。

 最後に記者のローストビーフ「食レポ」。ソースや本わさびを付けて食べるのも美味だが、“超(ちょう)低温”で加熱したという肉をそのまま食べても格別。100グラム1098円から。「特別な日に、大切な人と食べてほしい」と中山さんは薦(すす)めていた。

(小学校高学年向けに、難しい漢字にふりがなを振りました)

【2019年05月23日掲載】

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