「素材はすごい」―独立Lで対戦した岩村明憲氏が語る、ドジャース北方悠誠の可能性

ドジャースとマイナー契約を結んだ北方悠誠【写真:荒川祐史】

BCリーグ福島の監督として対戦「あのスピードボールは驚異的な武器」

 BCリーグ栃木の北方悠誠投手が、ロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を結んだ。2011年ドラフト1位でDeNAに入団しながら、潜在能力を発揮できないまま、NPBで2度戦力外通告を経験。制球が大きな課題ではあったが、150キロ台後半の剛速球を武器に、独立リーグを渡り歩きながらNPB復帰の道を探っていた。

 そんな25歳右腕に目を付けたのがドジャースだった。日本の独立リーグから米球界入りを掴んだ北方について、同じBCリーグの福島レッドホープスで指揮を執る岩村明憲監督は「夢は広がりますよね」と話した。

「彼の場合は、時速160キロの球を投げる素材があって、NPBを経験した上で独立リーグに来ている。だから、アマチュアから直接独立リーグに来た選手にも、このパターンが当てはまるかというと、少し難しい部分はありますよね。でも、メジャー球団も日本の独立リーグまで電波を張っていると分かったことは、外国人選手も含め、みんなにとって刺激になると思いますよ」

 岩村監督自身、2007年から4シーズンをメジャーでプレー。世界トップレベルの選手たちと鎬を削った。そんな岩村監督の目に、対戦相手としての北方はどう映っていたのだろうか。

「あのスピードボールは驚異的な武器ですよね。BCリーグにもバッティングだけだったらNPBで通用する可能性がある選手は何人もいるけど、そういう打者と対戦しても、彼の真っ直ぐは群を抜いている。素材としてはすごいものがありますよ。ただ、日本では制球難があるということで、一度レッテルを貼られてしまった。事実、突如としてビックリする球を投げる時もあったからね(笑)。それでも、メジャーのスカウトが見る中で、おそらく本人も来ていることを知っていたと思うけど、その中で自分のポテンシャルを発揮できたのは、彼の成長でしょう」

マイナーでは「日本以上に打者の目がスピードボールに慣れている」

 ドジャースでは傘下マイナーからメジャー昇格を目指すことになる。ルーキーリーグから3Aまであるマイナー組織で、どのレベルに配属されるかは未定だが、岩村監督は成功の鍵となるのは「ストライクを取れる変化球」だと見ている。

「真っ直ぐだけじゃNPBでも無理。現実的に、大谷(翔平)君が投げた165キロの球も本多(雄一)君にファウルにされているわけですよ(2016年10月16日ソフトバンク戦)。スピードボールだけだとNPBでも難しい。プラスαが欲しいわけです。大谷君にはスライダーとフォーク、クルーンにもフォークがあったでしょ。

 アメリカで生き残るには、ストライクを取れる変化球を磨いた方がいいですね。マイナーであっても、150キロ台後半の球を投げる投手はいっぱいいるので、日本以上に打者の目がスピードボールに慣れている。ストレート1本で押すのは難しい。だから、新しい環境でボールもマウンドも違う中で、ストライクを取れる変化球を習得していけばいいんじゃないかと思います。彼にとって一番大きなことは、レッテルを貼られていない真っ新な状態でスタートできること。日本では一度貼られたレッテルを剥がすのは難しいから」

 文字通りの新天地で、北方がどんな成長を見せるのか。日本の独立リーグからメジャー昇格という大きな挑戦は、もうすぐ幕を開ける。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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