【MLB】菊池雄星はなぜ、カーブを狙い打たれたのか? アスレチックスの策略とこれからの課題

マリナーズ・菊池雄星【写真:AP】

「90マイルいくかいかないかのストレートは、躍動感や腕の振りも弱かった」

■アスレチックス 6-5 マリナーズ(日本時間26日・オークランド)

 25日(日本時間26日)に行われた敵地アスレチックス戦に先発したマリナーズの菊池雄星投手。同地区のアスレチックスを相手に3回1/3を投げて10安打5失点(自責点は4)と、1回限定の“ショートスタート”だった4月26日を除き、今季12試合目の先発で最短の降板となった。

 連敗を止めるピッチングはできなかった。最近6試合の登板で、チームが負けたのは僅かに1試合。菊池にかかる期待は大きかった。しかし、この日は試合前のブルペンから大乱調。カーブ、スライダーともに制球が定まらず、直球は捕手がジャンプしても届かない大暴投もあった。こんな状態で上がったマウンドで、菊池は相手の徹底した「狙い打ち」に苦しめられた。

 その策は初回の凡打にはっきりと見て取れた。1回無死一塁で、菊池は2番ピンダ―を三ゴロ併殺に打ち取ったが、初球のカーブを躊躇なく引っ張ったもの。これがピンダーにとっては拙攻で括れない“生産的なアウト”だった。3回の次打席ではカーブを再び強振し、追加点に繋がる左前安打を放った。許した10安打のうち4安打は、右打者に打たれたカーブ。そこを問われた菊池は怪訝な顔で振り返った。

「今までカーブを有効に使ってきましたが、どんなカウントで投げても待たれているとう感じがすごくあった。(体勢が)崩れることなく狙い澄ましたかのように綺麗に打たれたのは、今までとの違いとしてありました」

 キレのない直球も狙われていた。この日右打席に立つ7人の打者が、意識として持っていたのは外角直球の右方向狙い。1回2死から3番のチャップマンに被弾した一打をはじめ、3回先頭のセミエンが放った右飛も、さらには、その回に四球を選んだ5番カナの初球のファウルも、その狙い球を打ち損じたものだった。

菊池は26日の登板を自己分析「ストレートがあってのカーブだと思います」

 菊池は相手の出方を理解した上で、してやられた。

「徹底してチームの作戦を決めて向かって来るというのは聞いていましたし、今日はそれを上手く徹底された。それを上回ることができなかったというところは感じます」

 その言葉で重なった人物がいた――。レンジャーズ時代のダルビッシュ有である。

 大リーグ3年目を迎えた2014年の4月の終わりだった。本拠地テキサスでアスレチックス戦に登板した右腕は6安打4失点で4回途中で降板した。黒星を喫して同チームに前年から5連敗となり、対戦成績は1勝7敗となっていた。あの日の試合でジェイソ(2017年で引退)は、いずれも直球を打って2安打。主砲のドナルドソン(現ブレーブス)は、初球のスライダーを捉えていた。 

 登板から一夜明けた26日(日本時間27日)、菊池は前夜についてこう自己分析した。

「ストレートがあってのカーブだと思います。特に初回、2回3回あたりまでの90マイル(約145キロ)いくかいかないかのストレートは、映像を見ても躍動感や腕の振りも弱かった。そういう中でカーブをいくら投げても対応されるなというのは映像を見てやっぱり感じたんで。もっとストレート、全部の球種を思いきって腕を振れる状態に戻すことが一番かなと思いますけどね」 

 同じア・リーグ西地区のアスレチックスとは今季まだ4カード、11試合が残っている。同地区で覇権を争うライバル。戦う毎に研究を重ね戦術に厚みを増す相手に今後菊池がどう対応していくのか。それもまた、これからの楽しみである。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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