横須賀の石炭火力「アセス不備」 計画取り消し求め住民が行政訴訟提訴

提訴後に会見を開いた、原告団代表の鈴木さん(中央)ら=東京都千代田区

 横須賀火力発電所跡地(神奈川県横須賀市)で進められている石炭火力発電所の建設計画を巡り、近隣住民らが27日、計画を認めた国の「確定通知」の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こした。住民側は、建設する火力発電会社が施設の更新と位置付け、環境影響評価(アセスメント)の期間を短縮したのは不当で、経済産業相が計画を認めたのは違法と指摘している。

 行政訴訟を起こしたのは「石炭火力を考える東京湾の会」のメンバーら45人。

 訴えによると、石炭火力発電所は、東京電力フュエル&パワーズと中部電力が出資する火力発電会社「JERA(ジェラ)」が建設する。石油やガスを燃料とする複数の火力発電所を、2基で計130万キロワットの石炭火力発電所に建て替える計画で、8月に着工、2023年以降の稼働を目指している。

 同社は建設計画を老朽化した既存施設の更新と位置付け、国のガイドラインに基づき、環境アセスの期間を短縮した上で、昨年11月に評価書を経産省に提出。世耕弘成経産相は同月、評価書を変更する必要がないとする確定通知を出した。

 これに対し、メンバーらは既存の火力発電所のほとんどが10年以上稼働していないことから「石炭火力発電所は新設で、更新のためのガイドラインは適用されない」と指摘。環境アセスの期間短縮は環境影響評価法と電力事業法に違反しているとしている。

 また同社が評価書の中で、建て替えることで温室効果ガスの排出量が減ると説明している点についても、メンバーらは「停止している状態から、発電所を新たに建設して動かすのは『純増』と言っていい」とした。

 提訴後に都内で開いた会見で、原告団代表で同会に所属する鈴木陸郎さん(77)は「健康被害が心配。若い世代の将来を守るため、石炭でなく再生可能エネルギーの検討を」と述べた。一方、経産省電力安全課は「訴状の内容を確認できておらずコメントできない」とした。

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