彫刻家が描くデッサン画の魅力 平塚市美術館

舟越桂さんの「冬の本」(1988年)とデッサン画

 近現代の彫刻芸術の歴史をひもとくとともに、その彫刻家が描くデッサン画の魅力を考える展示会「空間に線を引く」が6月9日まで、平塚市美術館(神奈川県平塚市西八幡)で開かれている。

 彫刻家のデッサン画に焦点を当てた初の展示会で、大正期から現代まで20人の彫刻家を紹介。彫刻作品とその作品を制作するためのデッサン画など計330点を展示している。

 西洋芸術に傾倒しない独自の芸術論で後世に影響を与えた橋本平八(1897~1935年)の代表作「少女立像」のほか、戦後に台頭した「具象彫刻」を先導した佐藤忠良さん(1912~2011年)や舟越保武さん(1912~2002年)らの作品が並ぶ。「具象彫刻」では従来の写実表現だけでなく、対象の内面を描くことを目指し、その試みが精緻なデッサンの筆遣いにも表れている。

 現代を代表する彫刻家では舟越保武さんの次男で、世界的にも評価の高い舟越桂さんの「冬の本」(1988年)など作品10点を展示。伝統的な木彫りで人物像を表現する桂さんのデッサンは納得するまで何度も描き直し、綿密な創作活動の様子をうかがうことができる。市美術館の土方明司学芸員は「彫刻家にとってデッサンは創作のイメージトレーニング。彫刻家の描くデッサンは画家とも違う独自の魅力がある」と話す。

 午前9時半から午後5時まで。月曜休館。一般400円、高校・大学生は200円。中学生以下無料。

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