カンヌ国際映画祭のオープニングを飾った、イランの巨匠・アスガー・ファルハディ監督が描くヒューマンサスペンス。実生活で夫婦のペネロペ・クルスとハビエル・バルデムが、元恋人同士を演じて話題を呼んだ作品です。
ヒロインのラウラは、アルゼンチンに暮らしていますが妹の結婚式に出席するために故郷であるスペインの小さな町に美しい娘と一緒に戻ってきます。ハビエルが演じる元恋人のパコに再会したりと昔を懐かしみながら妹の結婚式は始まり、楽しい時を過ごす中、突然停電が起きます。電気が再びついたとき、部屋にいたはずの娘がいなくなってしまうのです。絶望するラウラの元に、身代金を要求するメッセージが届き、アルゼンチンからは夫もやってくるのですが……。
このストーリーを聞けば、娘の行方がどうなるのか、そして真犯人は一体誰なのか、という展開をきっと期待するでしょう。ですが、そこはカンヌ国際映画祭のオープニングを飾る作品の凄さ。そんな単純な映画ではありません。田舎町ならではの閉塞感が生み出す孤独や、僻み、そして嫉妬心。そんな人間の感情をファルハディ監督はねっとりと描いてくる。どんなに陽気に笑っていても、人間には汚い部分がたくさんある。そんな汚さをスクリーンを通じて突きつけられると、きっとざわざわとした気持ちの悪さを感じるはず。でもそれが人間。最高で最悪なサスペンス映画となっています。★★★★☆(森田真帆)
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム
6月1日(土)から全国順次公開