「僕はイエス様が嫌い」 新鋭監督の丁寧な演出に心打たれる

(C)2019 閉会宣言

 22歳の奥山大史が監督した初めての長編映画。この映画が、サンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を史上最年少で受賞し、それ以来世界中の映画祭を熱狂させていることをご存知でしょうか? おばあちゃんと一緒に暮らすために、都会から雪深い地方の小学校へと転校してきたユラの物語です。

 ユラを演じているのは、役名と同じ名前を持つ佐藤結良くん。ちょっとぼーっとしたような彼が纏う雰囲気がとってもマイペースで可愛らしく、映画『誰も知らない』の柳楽優弥を思い起こさせる才能の持ち主です。

 キリスト教系の小学校にやってきたユラは、同級生達と一緒に礼拝を行うようになります。よくわからないままに参加させられる礼拝に強烈に違和感を覚えるユラですが、違和感を覚えながらそのうちなんとなく馴染んでいっちゃう順応性も、どこをとっても小学生ってこうだよねって描き方も自然。感情の機微、どこまでも続く圧倒的な雪景色の美しさと孤独。監督の丁寧な演出に心を打たれます。

 ちなみに、お祈りをしているユラの目の前に現れる小さなイエス様を演じるのは、お笑い芸人としても活躍しているチャド・マレーン。この神様役がなんとも言えない味を出しています。思わず笑ってしまうユーモアが散りばめられているところもまたオツなんです。★★★★☆(森田真帆)

監督・脚本:奥山大史

出演:佐藤結良、大熊理樹、チャド・マレーン

5月31日(金)から全国順次公開

© 一般社団法人共同通信社