5月31日まで脳卒中週間 症状気付き 早期治療を 長崎大学病院・立石、高畠両医師に聞く

「症状は前触れなく起こる」と話す立石医師(右)と高畠医師=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

 5月25~31日は脳卒中週間。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして起こる脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を指し、がん、心疾患とともに日本人の三大死因の一つ。一命を取り留めても後遺症の恐れがある。症状に気付き、早期に治療を受けることが大切。長崎市の長崎大学病院脳神経内科の立石洋平医師と、同リハビリテーション部の高畠英昭医師に、症状や治療、リハビリ、予防に関する知識を聞いた。

 ■前触れなく発症
 立石氏 その名の通り、卒然(突然)と起こるのが特徴。脳梗塞は脳の血管が詰まり、血液が行かなくなった脳細胞が死んでしまう。脳出血は脳の血管が破れ、血液が脳組織を壊してしまう。くも膜下出血は脳の動脈瘤(りゅう)が破れ、脳の表面に血液が広がって突然死する恐れがある。
 当院の場合、年間で脳卒中患者全体の約65%が脳梗塞。脳出血は25%、くも膜下出血は10%程度だ。脳梗塞の死亡率は5%ほどだが、死亡者数は三つの中で一番多い。後遺症が残る可能性のある病気でもあり、生き延びても、その後の日常生活が変わってしまうことがある。医療費も多くかかる。
 前触れなく突然起きるため、症状に気付くことが大切。「言葉・顔・腕」の三つを覚えておきたい。▽話しにくくなったり、ろれつが回らない▽顔の片方にまひが出る▽片方の腕が上がらなくなる-といった症状が突然出る。脳梗塞や脳出血では痛みがほぼない。一方、くも膜下出血は突然、経験のないような激しい頭痛が起きる。

脳卒中の3大症状

 ■早めにリハビリ
 立石氏 脳梗塞の場合、発症から4~5時間以内なら、血栓を溶かす薬を点滴する「tPA静注療法」が取られる。近年確立された「脳血管内カテーテル治療」は、足の付け根から挿入したカテーテルを脳に誘導し、血栓を直接取り除く。脳出血は血圧を下げる治療が行われ、手術もあり得る。くも膜下出血も手術になる。早く治療するほど後遺症がない可能性が高まる。
 高畠氏 後遺症となった場合、早期にリハビリをするのが大切。現在は早い人で発症翌日、遅くとも3日以内に始めることが多い。発症から時間がたてばたつほど、体の機能が衰えていくから。代表的な後遺症は半身不随で、片側の手足が不自由になるが、リハビリで改善できる期間は最初の半年とされる。それ以上たつと、後遺症が固定してしまうことが多い。
 最終的に帰宅できるようにするため、直接治療を行う救急病院(急性期病院)と、専門の回復期リハビリテーション病棟を持つ病院が、緊密な連携を取っている。脳卒中患者全体のうち、治療後そのまま家に帰れる人は4割程度で、3割が回復期の病院に移り、このうち7割は家に帰れる。だが、全体の1割程度の患者は大きな後遺症が残り、入院や施設で過ごす。急性期の病院に長くいた方が安心と考える患者もいるが、後遺症を残さないためには、早めに回復期の病院で本格的なリハビリをすることも大事だ。

 ■血圧下げて予防
 立石氏 脳梗塞に関して気を付けたいのは、不整脈。心臓が小刻みに震える心房細動という病気になると、心臓の血液がよどんで血栓(血液の塊)ができやすくなる。血栓が脳の血管に詰まって脳梗塞が起きる。心房細動は年を取るほど起きやすく、症状がないこともある。脈拍が弱かったり、不規則だったりしないか気を付けたい。
 血圧を下げることが最も大切。血管病のほか認知症予防にもつながる。そのためにも、かかりつけ医を持つようにしてほしい。歯医者で口腔ケアを行うことも動脈硬化の予防に役立つことが分かっている。脳卒中について、日頃から関心を持ってほしい。

© 株式会社長崎新聞社