原爆症 2人認定 3人棄却 要医療性認めず 長崎地裁判決

原告2人を原爆症と認める判決を受け、一部勝訴と伝える弁護士ら=長崎市万才町、長崎地裁前

 がんや急性心筋梗塞などの疾患を原爆症と認めなかった国の処分は不当だとして、長崎で被爆した5人が処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は27日、2人を原爆放射線に起因する原爆症と認めた。他の3人は訴えを棄却した。
 原告5人は2013年から14年にかけて提訴。うち男性1人は16年に76歳で死亡した。
 国の原爆症認定は、被爆者の病気が原爆放射線の影響により引き起こされた「放射線起因性」と、医療を必要とする状態にある「要医療性」を審査して判断している。
 判決では、放射線起因性を判断する基準とした算定被ばく線量はシミュレーションに基づく推定値として「一定の目安にとどめるのが相当」と指摘。急性心筋梗塞を申請した男性(故人)は放射性降下物が付いたイモなどを食べており、相当の内部被ばくをしていたと判断した。甲状腺機能低下症を訴えた女性(74)も被爆直後に発熱や下痢などの急性症状はなかったが、線量率の高い地域で被爆したことなどから放射線起因性を認めた。
 一方、他の3人については原爆症申請時の要医療性を認めず、このうち慢性肝炎を申請した女性(81)については、原爆症の疾病には当たらないとした。
 原告側弁護団は判決について「急性症状がなくても放射線起因性を肯定した点は被爆者の具体的な状況に即した妥当な判断」と評価したが、棄却された3人については「要医療性の概念は極めて限定的で不当」と批判し、控訴を検討するとした。厚生労働省は「関係省庁と協議して対応を検討する」としている。

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