男女の仲を引き裂く神が祀られた弁財天の真ん前でホストがメッタ刺し 『新宿』という街の暗い成り立ち

5月23日、新宿区のマンションで20代の女が、ホストの男性を刺し重傷を負わせる殺人未遂が発生。ネット上には事件直後の血まみれの画像が流れるなど、様々な意味で広まっているが、ホストと客という男女の愛憎劇の末に起こった事件だったことも、人々の興味を惹いているようだ。

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事件が起きたのは、抜弁天と呼ばれる神社の目の前にあるマンション。歌舞伎町の東に位置するこの付近、歌舞伎町でホストに入れ込んだ女性が飛び降り自殺し、通行人の男性を巻き込んだ事件も記憶に新しい。

この近辺で男女の事件が多いのは、キャバクラやホストクラブが多いという理由だけだろうか。

筆者は今回の事件現場が「弁天(=弁財天)」の目の前であることが気になった。「井の頭公園でデートをすると別れる」という噂はあまりにも有名だが、これは、井の頭公園の池が弁財天を祀ったものであることに由来している。弁財天は元々、インドの神サラスヴァティという女性神でとても嫉妬深く、男女の仲を裂くとされる。今回の事件も弁財天の目の前で起きているのは偶然だろうか。

弁財天は、宇賀神という日本土着の蛇の神様と習合されたため、井の頭公園の脇もとぐろを巻いた蛇の姿をした宇賀神像がたっている。

昨年秋、ホストに入れ込んだ女性が歌舞伎町で飛び降り自殺をはかり、通行人を巻き込んで死亡した事件は記憶に新しいが、実は、歌舞伎町も弁財天の効験の中にいるのである。

新宿はかつて何もない場所だった。そこに地方からやって来た鈴木九郎という男が、巨万の富を築き現在の西新宿あたりに大邸宅を建てる。しかし彼には秘密があった。ありあまる金銀財宝の保管に困った九郎は、人夫を雇って人影の少ない近隣の土中に埋めて隠させていたのだが、隠し場所を知っている人間を増やさないため、作業が終わるたびに人夫を斬り殺していたのだ。

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そんなある日、九郎の娘に変化が起こった。全身に鱗が現れ、眼光は爛々と輝き、大蛇になってしまったというのだ。現代でも「蛇の抜け殻を財布に入れておくといい」といわれるほど、蛇は富を司るものとされるが、富を守るために多くの人を殺した報いが降りかかって来たのである。大蛇が外へ這い出ると、大雨が降り水が溜まって池となり、大蛇はそこに投身したという。その池は蛇池と呼ばれて、戦前まで実際に存在していた。

明治30年代になると、この付近に浄水場建設のはなしが持ち上がる。そして、この工事で掘り出された大量の土で、当時沼地だった現在の歌舞伎町を埋め立てていった。つまり、蛇の呪いがこもった土が歌舞伎町の礎となっているのだ。前述の通り、蛇は弁財天と習合される。歌舞伎町の真ん中、ドンキホーテからゴジラに向かう道を右に折れたあたりに、小さな公園ががある。ここに弁財天が祀られているのだ。

歌舞伎町でひねもす続く、男女の睦言。嫉妬深い弁財天がそれを黙って見ているだろうか。それとも、この近隣で起きる、男女の事件にはそうした理由があるのかもしれない。(文◎Mr.tsubaking)

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