0.474票差で当落が決まった! 得票数に小数点以下の数字が出る理由と、それによって運命が分かれた選挙を紹介

激戦となった選挙は、わずかな差で当落が決まることがあります。今回の統一地方選挙の千葉県の銚子市議会議員選挙では、この差が本当にわずかでした。最下位当選者の石上允康氏と、次点で落選した工藤忠男氏の票差は、なんと0.474票差だったのです。
今回はなぜ1票に満たない小数点以下の差になるのか、そして、このようになった場合、どのようなことが起こるのかといったことを解説します。

なぜ小数を含む票数になるのか

1票に満たない差ということは、整数ではなく小数を含む票数があることを意味します。1人の候補者に1票しか投票できないということを考えると、感覚的におかしいと感じる人が多いと思います。しかし、実際には今回のように得票数が整数ではなく小数を含むことは普通にあります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

例えば、ある選挙に「選挙ドット」さんと「選挙コム」さんの2人が立候補していたとします。ここで「選挙」としか書かれていない票が1票ありました。この票は、「選挙ドット」さんの票なのか、「選挙コム」さんの票なのか分かりません。
このような場合は、この票を無効票とせず、まず「選挙」としか書かれていない票以外を集計します。この「選挙」としか書かれていない票以外を集計した結果、「選挙ドット」さんは600票、「選挙コム」さんは400票でした。この時点での2人の得票割合に応じて「選挙」としか書かれていない票の扱いが決まります。

今回の例ではドットさんが6割、コムさんが4割なので、「選挙」としか書かれていない1票は、ドットさんに0.6票、コムさんに0.4票というように配分されます。そして最終的な結果は、選挙ドットさんが600.6票、選挙コムさんが400.4票となります。
このようにして小数を含む得票数が記録されるのです。複数の候補者に該当しそうな票のことを按分票(案分票)と呼びます。

按分票は同姓あるいは同名であるほかにも、姓や名の読みが同じであった場合も生じます。例えば、今回の銚子市議会選では「石上(いしがみ)」姓の候補者が2人いたほか、同じ「いしがみ」という読みの「石神」姓の候補者がいました。そして、「いしがみ」としか書かれていなかった票が4票あったため、この4票は3人で按分されています。

最近の1票未満の差で当落決まった事例

按分票が生じること自体はよく見られます。同姓あるいは同名の候補者が立候補することは見られますし、漢字は異なるが読みが同じ、というところまで拡大すれば、より多くの例が存在します。ただ、1票未満の票差で当落が決まる事例となると、そこまで多く存在するわけではありません。

ここ3年ほどの選挙を見てみると、1票未満の差で決まった事例は数例見られます。例えば、2018年1月に行われた香川県の三豊市議会議員選挙では、最下位当選者と次点候補者との差が0.327票でした。また、2017年には3月に行われた広島県の安芸太田町議会議員選挙では、最下位当選者と次点候補者の差が0.895票、8月に行われた熊本県の八代市議会議員選挙では0.723票差で当落が決まっています。

1票未満の差の場合は選挙が簡単には終わらない

票差が1票未満の場合、開票結果が出ても終わりではなく、当落をめぐってこじれることがしばしばあります。
拙記事『「ヒゲ」でも有効票。葛飾区で当選・落選が入れ替わった「1票差の逆転劇」はなぜ起きた?』で紹介したように、僅差で当落が決まった場合は無効票などの解釈をめぐって、争いがしばしば生じます。
具体的には何を書いているか分からないとして無効と判定された票を「よく読めば自分の氏名が記載された票である」としたり、候補者のものでないとして無効と判定された票を自分の氏名を書こうとして誤記したとして有効であるとしたり、逆に他候補の票が無効票の条件に当てはまるので無効であると訴えたりするのです。
小数点以下の差の場合、1票でも無効票が自分の票になるか、相手の票が無効票になれば、逆転となるので、ほとんどの場合、負けた候補は選挙結果への異議申し立てをして、票の再点検を要求します。
なお、この異議申し立てに関する詳細については拙記事『「その選挙結果に異議あり!」選挙結果への異議申し立ての結果、500票差が入れ替わった地方選挙があった…?!』で紹介しています。
ちなみに今回の銚子市議会選の事例では次点で落選した工藤氏は、市の選挙管理委員会に異議を申し立てました。これを受け、市は票の再点検を行いましたが、得票数は変わらないと判定し、異議申し立てを却下しました。そのため工藤氏は現在、千葉県選挙管理委員会への異議申し立ての方針を示しているとのことです。

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