【MLB】元メジャー岩村氏が指摘する「打者・大谷」復活の鍵 「右腰の開き具合」

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

右肘手術の影響で今季は打者専念、5月8日に“復帰戦”

 昨季は二刀流として新人王を獲得したエンゼルス大谷翔平投手。右肘靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた影響により、今季は打者に専念しているが、5月7日(日本時間8日)の“復帰戦”以来、打者として持つ類い稀なる才能をいかんなく発揮し続けている。27日(同28日)を終え、出場17試合で66打数15安打2本塁打9打点。

 相手先発の左右にかかわらず「3番・DH」としてスタメン起用され続ける24歳について、「オープン戦を経験せずに、よくここまでできるなと思いますよ」と感嘆の声を上げるのが、元メジャーで現在はBCリーグ福島レッドホープスの監督を務める岩村明憲氏だ。

「開幕から1か月以上が経って、ピッチャーも慣れてきたところで復帰したわけでしょ。いくらライブBP(実戦形式の打撃練習)を50打席分やったとしても、あくまで練習で実戦とは違いますよ。それをいきなり、記録に残る舞台で結果を出すところがすごい。走塁の感覚も試合数を重ねれば戻るでしょう。今は3番打者で固定されているから、自分が走者で出た時に4番、5番打者の打球の質やクセを覚えておくと、一歩を踏み出すタイミングは全然変わってきますよ」

 右肘手術を経た打者・大谷は、1年目と比べて何か変化はあったのか。岩村氏の目には「不安要素は見えない」と言う。

「野手でトミー・ジョン手術を受けた選手が自分の周りにはいないけれど、一般的な肘の手術を受けた後は、肘が伸びきった状態になる動きが気になると思います。例えば、ハーフスイングとか、左腕のスライダーや右腕のチェンジアップを片手でファウルするとか。どうしても右投げ左打ちの場合、右手が大事になってくるので。でも、今は不安要素は何も見えませんね。フォームは重心を下げてスタンスを若干広くして打とうとしている部分が見えますが、基本は変わっていない。基本を変えずにいろいろな引き出しを作るのはいいことだと思いますよ」

岩村氏が見る左腕攻略の鍵は「右腰の開き具合」

 昨年から打者・大谷が持つ唯一の欠点とされているのが、対左腕との相性だ。今年は相手先発が左腕でもスタメン出場しているが、キャリア通算では対先発右腕の打率は.296なのに対し、対先発左腕の打率は.229と苦戦。だが、岩村氏は「今シーズン中には、対左腕の打率も上がると思いますよ」と断言する。

「対左と対右の差はどうしても数字で出てしまうので、低い数字のことを周りはいろいろ言いますよ(笑)。その声をシャットアウトするには結果を出していくしかない。大谷君に2年目のジンクスはないでしょ。今季1号の左中間ホームランのような打球をしっかり打ってきますから。あれをやっているうちは、そう簡単には大きく崩れない。

 1年目を見ていても、大谷君はいろいろなことを吸収するのが早い賢い選手。対左腕の打率は、今季途中には対右腕と変わらなくなってくると思います。少し気になるのは、対左腕の時の右腰の開き具合。左投手が投げたアウトローの球をセカンドゴロにした打席があったけれど、コース的にはそうなるコースじゃない。右投手が同じコースに投げた時は、右腰とボールと正対してヒットになっている。投手の左右でボールが入ってくる角度は違うけど、バットで打っているポイントはだいたい一緒なんですよ」

 解説者として大谷の試合は全てチェックしている岩村氏の目には、今年の傾向として「右腰の開き」が見えているという。だが、大谷が修正するのは時間の問題。対左腕を克服すれば「3割は普通に見えてきますよね」と太鼓判を押す。

「チームの3番打者になれる日本人選手が出てきたことは素晴らしいこと。ガンガン打って走って、存分に才能を発揮してもらいたいですね」

 今季は投手としてマウンドに上がらない大谷が、この1年で打者としてどこまで成長を遂げるのか。さらにスケールの大きな二刀流としての活躍を期待する上でも興味深いところだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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