【登戸児童殺傷】静かな町、響く悲鳴 「悔しく、残念」

事件を受け会見する馬場川崎市消防局警防部長(右)ら=午前11時半、川崎市役所

 川崎市多摩区の登戸駅近くで28日朝、スクールバスを待つ通学中の子どもたちが襲われた事件。現場周辺は、古くから住んでいる人も多い落ち着いた地域だ。日常の朝に起きた凶行に、周辺住民は一様に言葉を失い、情報が錯綜(さくそう)する中で川崎市や同市教育委員会も安全確保などの対応に追われた。

 現場のすぐ近くに住む男子大学生(19)は、自宅の窓から惨状を目の当たりにした。「朝起きてシャワーを浴びていた。小学生がキャーキャー騒ぐ声が聞こえ、初めは遊んでいるのかと思った。SNSで事件だと知り、窓から見るとフェンスと路上に血が付いていた。いたたまれない。自分は地方出身だが、この辺りは治安が良いと聞いていた」

 近くに住む清掃業の女性(72)は登戸駅方面へ自転車で通勤途中に事件に遭遇した。「『きゃー』という声が聞こえ、何人かが叫んで、子どもたちが散り散りに逃げていた。普段は静かな所なのに」と、目に涙を浮かべながら話した。

 現場近くの一軒家に住む無職男性(79)は「毎朝、7時半ごろからバスに乗る子どもたちが30人ぐらい集まってきて、その声で目が覚めることもあった。きょう聞こえてきたのは悲鳴。叫ぶしかなかっただろう。60年暮らしているが、こんなことは初めて。悔しく、残念でならない」とつぶやいた。

 事件を受けて川崎市は、午前8時52分に防犯アプリで情報発信し、ほぼ同時刻に多摩区内の29保育園に散歩禁止を求める電話連絡をした。区内の小学生の下校時には青色パトロールカーが出動した。

 市教育委員会は、事件後に近隣の市立小、中、特別支援学校10校の全児童・生徒の安全を確認。市内の全市立校にメールで連絡し、登下校時の通学路の安全確認を要請した。29日以降も続けていくという。

 福田紀彦市長は「大変強い憤りを感じている。事件の内容を確認し、被害にあわれた方への支援を行うとともに、市民生活の安全確保に取り組む」とのコメントを出した。

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