仕事をしながらサッカーに打ち込む社会人サッカーの魅力と問題点

普段あまりスッポトライトを浴びることのない社会人サッカー。 その魅力と問題点に迫る。

多種多様なクラブの混在が魅力

日本プロサッカーリーグであるJリーグは3部制となっており、J1、J2、J3があることはサッカーが好きな人ならご存じのことだろう。現状、J1とJ2ではほとんどの選手とプロ契約を結び、選手達はサッカーだけで生活しているのが大半だ。しかし、J3リーグの選手達は完全にプロのクラブもあれば、他に仕事を持ちながらプレーするアマチュアの選手もいるいわばセミプロリーグだ。

サッカー界ではJ3以下のカテゴリのサッカーはコミュサカと呼んでいる。あまり馴染みのない言葉だろうが、近年はいわきFCやFC今治といった財力のあるクラブの影響で少しずつ浸透してきている。

そんな社会人サッカー(コミュサカ)の魅力とは何だろうか?その魅力の1つに多種、多様なクラブの

混在があるだろう。J3を見てもプロ選手のみ所属するクラブもあればアマチュアの選手もいる。そして、JFLにはFC今治のようにJリーグ参入を目指すクラブもあればホンダFCのように完全な企業クラブも存在する。さらには流通経済大学や東京国際大学のサッカー部のように学生ながら社会人リーグに参入しているクラブもある。その他にも自衛隊の隊員のクラブや警視庁も存在し、まさに多種、多様なのが現状だ。

現在、全国でJリーグ参入を目指す社会人サッカークラブは85前後あると言われている。それ以外の

クラブはプロ化を目指さず、あくまで仕事とサッカーを両立することを目的としている。

それゆえの問題も多いこともたしかだが、仕事をしながらサッカーに本気で打ち込む選手は多くいる。

そして、選手との距離が近いことも魅力の1つだろう。試合の前後に選手や監督と観客やサポーターが話をすることができたり、副審の真後ろのピッチまで5mのところで試合を観戦することができることも多々ある。J1やJ2では選手が試合後にサインすることは考えにくいが、J3以下のカテゴリでは

そう珍しくない。特に、JFL以下のクラブでJリーグを目指すクラブの多くは試合後にサインや写真撮影などのファンサービスを積極的に行っている。こうした選手との距離の近さも魅力の1つと言えるだろう。

欠かせないスポンサーの存在

プロサッカークラブを運営する上で、スポンサー企業の存在は欠かせず、重要である。それは社会人のサッカークラブにも同じことが言える。スポンサーの全くついてないクラブが普通ではあるが、カテゴリが上になればなるほどスポンサーの存在は重要になる。クラブを運営するには、選手の登録費用やグラウンド代、ビブスやマーカーなどの用具代やユニフォーム代と様々な費用が発生する。

それら全てを選手が負担するとなると選手にとっては大きな出費となり、金銭的事情を理由にプレーすることを諦めてしまう選手が出てくる。プロ契約選手を抱えているクラブや選手の会費負担が0のクラブもスポンサーがいるからこそ成り立っている。

メガバンクや大手不動産会社もスポンサーに

Jリーグクラブに比べると露出が少ないのが

現状の社会人サッカーだが、有名企業がスポンサーとなっているケースもある。

関東1部リーグ(5部相当)のブリオベッカ浦安は伊藤園や明治安田生命といった複数の有名企業が

スポンサーとなっている。また、同じく関東1部リーグの東京ユナイテッドFCではみずほ銀行、栃木シティFCは住友不動産、VONDS市原はFUJI XEROXがスポンサーとなっている。さらに、千葉県1部リーグに所属し、市川からJリーグ参入を目指す市川サッカークラブは7部相当のリーグながらデイリーヤマザキがスポンサーとなっている。

社会人サッカークラブでもメガバンクや大手不動産会社、保険会社がスポンサーとなっている。

これらのスポンサーの存在によってクラブは成り立っているが、大手企業がこうしたクラブのスポンサーをするには社会人サッカーに何かしらの魅力を感じていて、「応援したい」と思っているからだろう。

選手や練習場所、試合会場の確保の問題も

これまで社会人サッカーの魅力や現状に触れてきたが、そこには多くの問題があるのも事実だ。

まずは選手の確保だろう。社会人クラブがゆえに、サッカー以外の仕事を抱えている選手が大半で

休日出勤や家族がいる選手も少なくない。

そうすると公式戦であっても試合に毎回参加できる選手はそう多くない。Jリーグを目指すようなクラブでスポンサー企業が選手を雇用し、就職支援をしているようなクラブ以外では、公式戦でも多くの欠席の選手がいる。そのため、人数が揃わずに棄権するクラブが後を絶たない。筆者も社会人チームに大学時代所属していたが、人数不足で9人で試合を行ったことがある。

そして多くの社会人クラブが抱えている練習場や試合会場の確保だ。J3のクラブですら、クラブ専用の練習場がないクラブも存在する。試合に関して言えば、行われるのは土日、祝日がほとんどだが、小中高校生や大学の試合が行われ、それらが優先的にグランドを確保している。

先のサッカー人生が長いことや日本サッカーの強化を考えるといたし方ない部分もある。

しかし、東京都の社会人リーグが千葉や茨城で行われたりすることも多々あるのが現状だ。移動距離が増えれば、選手の金銭的や体力的な負担も増える。負担が増えた結果辞めていってしまう選手も出るため、選手の確保に影響が出る。まさに悪循環だ。

社会人サッカーには多くの魅力があるが、それと同時に問題点も多く存在する。今後、少しでもこれらの問題が解決し、社会人になっても多くの選手がサッカーを楽しめる環境になることを願いたい。

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