【登戸児童殺傷】包丁振り回す男 「きやー」「逃げて」と悲鳴

男性らが倒れていたとされる現場=川崎市多摩区、28日、午前9時50分ごろ

 閑静な駅前の住宅街に、スクールバスを待つ児童らの悲鳴が響き渡った。現場には血だまりができ、児童らがぐったりと路上に横たわる中、近隣の開業医や救急隊員らが応急処置に奔走。緊迫した光景に、現場周辺の住民は一様に不安の表情を浮かべた。

事件発生時、近くの公園にいた50代男性は、子どもたちの「怖い」という叫び声を聞いた。男性が声の方向を見ると、男が手にした包丁を振り回していたという。

 近隣に住む女性(72)は通勤途中に事件に遭遇。「きゃー」という悲鳴や「逃げて」という叫び声が現場に響き、「まだスクールバスに乗っていなかった子どもたちが散り散りに逃げていた」と振り返った。

 多摩署によると、スクールバスの運転手はバス停に到着した際に、前方から刃物を持った男が近づいてくるのに気付いたと説明。児童を襲い始めた男に「何やっているんだ」と言うと、男はバスを離れた後に包丁で自らを刺したという。

 現場にはバス停から数十メートルにわたって児童や男性ら数人が血を流して倒れ、救急隊員が懸命に心臓マッサージなどを施した。現場近くに住む女性(89)は、ランドセルを背負った男児が苦しそうに倒れ込む女性の手を握る姿を目撃したといい、「周囲の人が『お母さん頑張って』と声を掛けていた。近くのクリニックの医師や看護師が駆け付けて応急処置に当たっていた」と話した。

 顔に血しぶきがかかり、ぼうぜんとうずくまっている児童を見かけたという無職の男性(79)は、「いたいけな子どもの命が奪われてしまった。悔しくて、残念でならない」と唇をかんだ。近くの大学に通う男子学生(19)は「女児がストレッチャーで運ばれ、女性が泣きながら女児の手を握りしめていた。騒然とした雰囲気で怖かった」と述べた。

 現場周辺は多摩川に近く、河川敷のグラウンドや近くの公園では元気よく遊び回る子どもたちも多いという。子育て世帯も多い平穏な地域で起きた惨劇に、1歳の長男を育てる主婦(24)は「未来ある子どもを狙うなんて許せない」と悔しさをにじませた。

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