食で町と人を彩り20年 諫早のイタリアン料理店「クッチーナ」 営業時間や販路に工夫

育休中に学んだワインソムリエの資格を生かし、「多くの人が気軽に集う場所にしたい」と話す馬場さん=諫早市永昌東町

 長崎県諫早市のイタリアン料理店の“草分け的存在”の「クッチーナ」(貝津町)が今年で開業20年を迎えた。食べ歩きの趣味が高じて、会社員から食の道へ転じた馬場麻香さん(51)は、市内で数少ない女性オーナーシェフ、ワインソムリエだ。独自の営業時間の設定や販路拡大の工夫を凝らし、自らを含めて子育て中の女性の働きやすい環境をいち早く整備。モットーの「ひと手間を加えたカラフルでシンプルな料理」で町と人を彩ってきた。

 同市出身。「自分が食べたい料理を多くの人に食べてほしい」。会社を辞め、フレンチレストランで修業をしながら調理師免許を取得したのは29歳の頃。イタリア料理にひかれ、現地にも足を運んだ後、1999年に同店を開業した。

 転機は長女が生まれた2005年。育児休暇から復帰すると、子育て中の女性スタッフが多く、夜の時間帯の人手確保に悩んだ。思い切って日祝日と夜間の営業をやめ、月曜から土曜までの昼の営業に絞った。飲食業で異例の選択だった。

 「みんな子どもと過ごしたい気持ちは同じ。女性が働ける時間に合わせて、“稼げる”仕事をしよう」-。短時間で密度の濃い仕事のやり方に転換。菓子や弁当を作る許可を取り、直売所やスーパー、サッカーのV・ファーレン長崎の試合会場など販路を開拓し、利益を確保した。今でいう「働き方改革」を先取りした格好だった。

 50歳を前に再び転機が訪れた。体調を崩す日が続き、パンなどの製造や調理技術を身に付けたスタッフらに店を託すことを決めた。29日、市内で開くパーティーで感謝の思いを伝える。「時代に合わせて新しい料理を考えてきた20年。お客さまと家族の支えがあってこそだった」

 今後は昨年、諫早駅近くに開いた店「bar-ba(バーバ)」でワインの道を究める。もう一つの夢も追いかけている。12年から有志で開く音楽イベント「ISAHAYA SOUL ALIVE」を「町の名物」に育て、トランスコスモススタジアム長崎でライブを開くことだ。「音楽の力で諫早から活気を発信したい」。シェフ、ソムリエ、ボランティア-。その夢は進化を続けている。

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