響き渡るサイレンの音、飜る黒と白の旗。阪神甲子園球場に現れた巨大な緞帳が取り去られると、会場からは黄色い声援が湧き上がる。その、熱い目線の先にいるのは、狼の覆面をした5ピースバンドMAN WITH A MISSIONの面々……！ ギターを弾く狼、キーボードを叩く狼、歌い叫ぶ狼、などなど。もちろんぬいぐるみなので全員表情はない。なんともシュールだが、これがファンにとっては「当たり前」の光景。満員の甲子園球場は一曲目から地面が割れんばかりの盛り上がりだ。
2018年11月に行われた、バンド史上最大規模のソールドアウト公演「Chasing the Horizon Tour 2018」のなかから、ツアーファイナルの模様を収録した本作。初回限定生産盤とBlu-ray盤は「Special Mission」なる特典映像付きとなっている。
究極の生命体という「設定」だったり、でもその設定にだいぶ無理があったり（今回も最初から「僕たち、究極の生命体ということでやらしてもらってますけど」って言っちゃってる）。真面目なのか不真面目なのか、ひと昔前のロック界なら首を傾げたくなりそうなキャラクターだが、熱々すぎないこれぐらいの湯加減ならばたしかに、ちょっと笑ってその存在を受け入れたくなる。実家の両親にだって紹介できそうな親しみやすいロックスター。もちろん、楽曲の良さと演奏の実力あってこそだが、これぞ新世代のパフォーマンスのありようなのだと、妙に感じ入ってしまった。
（ソニーミュージック・5093円＋税(初回生産限定盤））＝玉木美企子
