【気象コラム】梅雨に咲く、「紅一点」の由来となった花は?

 季節の変わり目には、くもりや雨のぐずついた天気が続き、長雨になることがあります。

 冬から春へ季節が移り変わる時の長雨は「菜種梅雨」、春から夏は「梅雨」、夏から秋は「すすき梅雨」、秋から冬は「さざんか梅雨」と呼ばれます。それぞれの呼び名は、「菜種梅雨」は菜の花が咲く頃、「梅雨」は梅の実が熟す頃、「すすき梅雨」は各地ですすきが見られるようになる頃、「さざんか梅雨」はさざんかが咲く頃ということに由来するようです。

 

2018年6月6日(水) 近畿・東海・関東甲信で梅雨入りが発表された日の天気図

  これから6月中旬ごろにかけて、北海道を除く各地で梅雨の時期に入ります。梅雨の時期には、こちらの天気図のように、日本付近に前線(梅雨前線)がのびているのが特徴的です。前線の北側には冷たい北よりの風、南側には暖かい南よりの風が吹き込み、この2つの異なる空気の塊が前線付近に集まって雲が発生し、雨が降ります。前線が停滞すると、同じ場所で長時間にわたって雨が降り、局地的な大雨となる恐れがありますので注意が必要です。

  梅雨入り・梅雨明けは、それまでの天候の経過やその先の天候の見通しをもとに気象庁が発表します。ただ、梅雨は季節現象の1つで、数日にわたる移り変わりの期間があるため、「この日に梅雨入りしました」というのではなく、例えば「6月5日ごろに梅雨入りしたとみられる」という表現で発表されます。なお、最終的に、梅雨入り・梅雨明けは、春から夏にかけての天候の経過を考慮して、その年の9月に確定されます。そのため、当初の発表から期日が変更されたり、検討した結果、時期がはっきりしない場合は「特定しない」となることもあります。

  さて、梅雨の時期に咲く花といえば、アジサイの花やタチアオイの花などを思い浮かべる人が多いと思いますが、他にも見頃を迎える花があります。それはザクロです。食用の果実はよく知られていますが、花は梅雨が近づくころから咲き始め、梅雨の時期に美しく咲きます。

 

ザクロの花(筆者撮影)

 中国の詩人王安石が詠んだ「詠柘榴」という漢詩に「万緑叢中紅一点(ばんりょくそうちゅうこういってん」という句があります。この句は「辺り一面の新緑の草むらの中にただ一つ咲いている赤い花」という意味ですが、「紅一点」いう言葉はこの句に由来するといわれています。そして、実は、紅一点といわれる赤い花はザクロの花なのです。新緑が色濃くなる時期に、緑の葉の中でひときわ目立つ朱色の花はまさに紅一点です。

  四季折々、季節を彩る花々は気持ちを癒やしてくれますが、くもりや雨の梅雨空に映える朱色のザクロの花を楽しむのも良いですね。

 (気象予報士・久保智子)

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