社説:強制不妊初判決  被害救済につながらぬ

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 社会的差別がある中で声を上げられなかった障害者の救済につながらない判断だ。

 旧優生保護法下で知的障害を理由に不妊手術を強いられた宮城県の60、70代の女性2人が、国に計7150万円の損害賠償を求めた訴訟の仙台地裁判決である。

 判決は、旧法を「個人の尊厳を踏みにじり悲惨だ」として幸福追求権を定めた憲法13条に違反するとの判断を示したが、国が損害を賠償する立法措置をとらなかった責任を認めず、原告の請求を棄却した。20年間で請求権が消滅する除斥期間の適用についても違法ではないとした。

 同種訴訟は全国7地裁で20人が起こしており、今回が初判断になる。

 裁判で原告側は、手術を強いられた障害者やその家族らが、法的に差別されていた時代に、旧法に基づいて行われた手術の違法性を認識し、国家賠償法に基づく裁判で被害回復を図ることは事実上、不可能だったと主張してきた。

 判決は、その困難さに理解を示し、除斥期間の適用で賠償請求ができなくなった場合に立法措置が必要不可欠だったとしたものの、国内では「法的議論の蓄積が少なく、国会では明白だったとは言えない」として国の責任を免じた。

 だが、1948年に制定された旧優生保護法が96年に障害者差別の条文を削除して母体保護法に改正された後、国は国連人権委員会などから被害者救済を求められている。救済立法の議論はできたはずだが、事実上、被害を放置してきた。

 原告側は、優生手術により、誰といつ子を持つかを選ぶ「生殖に関する自己決定権」を侵害されたと主張し、障害者差別思想に基づいた旧優生保護法は憲法に違反すると主張してきた。

 判決がそうした旧法の違憲性を認めた点は評価できる。だが、重大な差別に対して救済の手を打たなかった国の責任を問わなかったのは納得しがたい。

 今年4月に被害者への「反省とおわび」と一時金320万円の一律支給を盛り込んだ救済法が議員立法で成立、施行されたが、国の責任を曖昧にしており、被害者の求める額と大きな開きがある。

 被害者の実態を直視し、救済法の不備を補う判決とならなかったのは極めて残念だ。

 被害者の高齢化が進む中、国が果たす役割は大きい。過ちを深く心に留め、真の救済につながる対策を急がねばならない。