BCリーグ福島にMLB初女性コーチがコーチ留学 岩村監督「国際交流の一環に」

福島レッドホープス・岩村明憲監督【写真:佐藤直子】

今季から運営会社の代表取締役に就任「僕はもう福島県民ですから」

 BCリーグ福島は参入5年目を迎える今季、チーム名を「ホープス」から「レッドホープス」に変え、新たなスタートを切った。球団創設1年目より指揮を執る岩村明憲監督は、新運営会社「Y.O.A」を設立して代表取締役にも就任。フロントの長として、現場の長として、チームを率いて福島を盛り上げることになった。

 2019年のチームスローガンに「Connect(つなぐ)」を掲げるレッドホープスは、様々な形でつながりを広げている。3月には郡山市を拠点とする女子硬式野球チーム「ふくしまヴィーナス」を傘下に加え、「福島レッドホープスレディース」とした。岩村氏は「福島の小中学校で野球やソフトボールをやっている女の子たちが将来的に目指せる場所になるといい。女の子だからこれをしないといけない、女の子だからやっちゃだめということは作るべきじゃない。彼女たちが野球を好きだという気持ちを応援したいんです」と話し、福島の野球少女たちが地元でプレーし続けられる環境の整備に取り組むとした。

 さらに、5月29日からはMLB史上初の女性打撃投手&女子コーチとなったジャスティン・シーガルさんがコーチ研修を積むことに。シーガルさんは2017年の第4回WBCではイスラエル代表コーチも経験した。「今回は日本でコーチ研修をしたいということで、ぜひ福島に来てもらうことにしました。福島は来年の東京オリンピックで野球とソフトボールの会場となるので、国際交流の一環にもつながると思います」と大歓迎。昨年、古巣のタンパベイ・レイズで始球式をした際は、球団オーナーのステュワート・スタンバーグ氏にチーム同士の交流を提案するなど、積極的にネットワークを広げている。

「日本の野球界はプロからアマまで一枚岩にならないといけない」

 フロントと現場の両者を代表することになった今年は、住民票を福島に移し、じっくりと腰を据えて地元発展に取り組む意気込みだ。愛媛で生まれ育ち、東京、アメリカ、仙台の球団でプレーした。2015年に選手兼監督として入団するまで縁もゆかりもなかった土地だったが、今では福島は第2の故郷となっている。5月からは西会津町の応援大使にも就任した。

「僕はもう福島県民ですから。球団経営を中途半端にするつもりはない。どうせやるならトコトンやる。今やっていることは、人生の縮図じゃないけど、それに近いものがあって、いろいろなことが勉強になるんですよ。何の縁もなかったところにパッと来て何かを始める。それもまた縁でしょう。福島には福島で生まれ育ったわけじゃないけど、地元だと思ってやっている人がいっぱいいる。僕もその1人ですよ」

 岩村氏が将来的に目指すのは、独立リーグとNPBの協力だ。メジャー球団の傘下にあるマイナー球団のように、独立採算制ではあるが、フランチャイズの1つとなって選手育成の場として生かされることだ。

「野球の競技人口が減っているという事実がある中、日本の野球界はプロからアマまで一枚岩にならないといけない。野球が上手い選手を集めてプロ野球を成り立たせることだけがNPBの仕事ではないと思うんですよ。独立リーグやアマチュア野球も巻き込みながら、一緒に野球界の裾野を広げて行こうっていう話し合いができることを、心から願っています」

 福島から始まるネットワークを少しずつだが着実に広げる挑戦は続く。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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