映画「愛がなんだ」プロデューサー 前原美野里さん(長崎市出身) 10年越しの夢実現

「原作の魅力が伝わる作品ができた」と話す前原さん=東京都内

 直木賞作家・角田光代の恋愛小説を映画化した「愛がなんだ」(今泉力哉監督)は4月公開後、若者中心にヒットを果たし、長崎市でも上映が始まった話題作。プロデューサーの前原美野里さん(33)は長崎市出身。原作にほれ込んで映画化を企画し、10年越しで実現させた自身初のプロデュース作品だけに「長崎でも、ぜひ見てほしかった」と喜んでいる。

 平凡なOLが、うだつの上がらない男に寄せる“究極の片思い”を描く同作。NHK連続テレビ小説「まんぷく」で存在感を示した新進女優の岸井ゆきのが主演、ほかに若手人気俳優の成田凌らが出演している。

 前原さんは映画の製作、配給などを手掛けるアニモプロデュース(東京)社員。プロデューサーは映画の企画立案、キャスティング、撮影、宣伝などすべてを取り仕切る役割で、加えて海外作品の買い付けなども担当。今回の取材は、カンヌ国際映画祭からの帰国直後で、「カンヌは初めてで、すごく楽しかった」と目を輝かせた。

 長崎県立長崎東高卒業後、山梨大へ進学。在学中、複数の映画の現地ロケにボランティアなどで参加した。この頃見た黒木和雄監督の戦争映画「美しい夏キリシマ」(2003年公開)が映画を志す契機になった。

 「長崎で育ったこともあって、反戦映画を作りたいと思った。監督よりも、作品を観客に届けるビジネスに興味を持った」と話す。

 卒業後の2008年、独立系映画会社に入社。「愛がなんだ」は「映画化したら絶対面白い」と当時、企画を立ち上げた。その後、一時映画業界を離れたが、2014年に現在の会社に入社して、再び具体化に着手。今年の公開にこぎ着けた。

 74カ所でスタートした上映館は、最終的に延べ200カ所程度まで広がる見込み。公開後の好調ぶりに「原作の魅力が伝わる作品ができた。みんなの苦労が報われてうれしい」と声を弾ませる。「観客の中の誰かの人生を肯定できるような映画を作り続けたい」と抱負を語った。

 「愛がなんだ」はユナイテッド・シネマ長崎で公開中。

「愛がなんだ」のキービジュアル((c)2019「愛がなんだ」製作委員会)

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