LMP1カーのバランス調整に苦慮するWEC、2019/20年にサクセスバラストを導入か

 FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブが、WEC世界耐久選手権の2019/2020年シーズンにおいて、LMP1クラスにサクセスバラストを追加しようとしていることが分かった。

 現在、WECの最高峰カテゴリーとなっているLMP1クラスでは、トヨタのハイブリッドカーとプライベーターチームが走らせるノンハイブリッドカーがおり、両車のギャップを調整するためにEoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)と呼ばれる性能調整が全車に課せられている。

 WEC/ル・マン24時間の統括団体であるACOでテクニカルディレクターを務めるティエリー・ブーベは、2019/20年シーズンに向けて“(現在と)わずかに異なる”EoTのシステムを開発しているとし、予定どおりの結果が得られる可能性が高いと示唆した。

 その新しいEoTに追加もしくは組み込まれると考えられるサクセスバラストは、前戦以前の成績に応じて規定のバラスト(=ウエイト)を車両に搭載させるもの。

 ツーリングカーシリーズなどで実績のあるこの性能調整システムは、ACO統括下にあるスポーツカーレースでも2019年からELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのGTEクラスに導入されたほか、WECでも2019/20年シーズンからLM-GTEアマクラスで採用されることが決定している。

 ブーベは今季、トヨタのTS050ハイブリッドとプライベーターのノンハイブリッドLMP1カーの間に競争が生まれなかったのは、さまざまな要因が組み合わさった結果であると説明した。

 そのひとつはLMP1プライベーターたちが従来よりもスピードアップした2018年型マシンの扱いに不慣れだったこと。また、四輪駆動であるトヨタTS050ハイブリッドのウエット路面時のアドバンテージ、そしてセブリングでは日本メーカーが採用した“複雑な”サスペンションが有利に働いたとしている。

「我々としてもハイブリッド車とノンハイブリッド車が接戦を演じるレースにしたかった」とブーベ。

「次のシーズンに向けて、私たちはレース結果も考慮に入れることができる少し違う性能調整システムの開発に取り組んでいる」

 また、ブーベはサクセスバラストシステムを提案したことを明らかにし、それが「良い解決策だと思う」と付け加えた。

 2019/20年シーズンに向けたこれらのレギュレーション変更の実現にはFIA耐久委員会の承認を得た後で、6月14日に開催予定の世界モータースポーツ評議会に提出されなければならない。

■ブーベ「ノンハイブリッド車のポテンシャルはル・マンテストデーで“最大限”になる」

 FIAとACOは6月2日に行われるル・マンテストデーに先立ち今月、テスト用のEoTを発表しているが、ブーベは当該テーブルがノンハイブリッド車のパフォーマンスを最大限に引き出すだろうと語っている。

「我々はルマンテストデーに向けたEoTを発表し、その中で非ハイブリッド車のための物理的パラメーター(エンジン出力と車両質量)を潜在能力を最大限に発揮できる数値のままにした」

「また、トヨタの車両重量は昨年のル・マンと比べて10kg重くしている」

「私たちはテストデーに各車の燃料消費量データを解析し、実際のレース用に燃料搭載量を調整していく。ラップタイムに関しては、とても接近するだろう」

SMPレーシングのBRエンジニアリングBR1・AER(左)とレベリオン・レーシングのレベリオンR13・ギブソン

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