米で強豪メキシカンリーグと対戦 アジアンブリーズのターニングポイントとなった一戦

アジアンブリーズがメキシカンリーグの強豪と対戦【写真提供:色川冬馬】

メキシカンリーグの強豪と対戦

 プロ契約を目指し米国で1か月間、試合を行ったアジアンブリーズの対戦相手はプロアマと多種多様。その中でターニングポイントとなった試合がある。それはメキシカンリーグチームとの対戦だ。

 約1か月間に渡る米国での試合の中で、メキシカンリーグに所属するティファナ・ブルズとキンタナロー・タイガースとの試合が組まれた。全16チームから成るメキシカンリーグは北部と南部、それぞれ8チームずつに分かれてリーグ戦が開催されている。今回対戦したティファナは昨春、MLBのオープン戦で大谷翔平選手と対戦したことが記憶に新しい。一方でキンタナローは強豪球団の1つに数えられ、2010年には大家友和氏が在籍していた。

 なぜ、メキシカンリーグで名だたる2球団と対戦が実現したのか。創設者の色川冬馬氏は「新たな選択肢としてメキシカンリーグのチームとの試合を考えました。なぜなら、誰もやったことがないからです」とその意図を語る。独自でトライアウトの仕組みを構築できるチームの強みを生かした結果が、今回の試合に繋がったと言えるだろう。

 色川氏にメキシカンリーグの球団と試合を振り返ってもらうと「投手陣が踏ん張っていたのですが、その一方で野手陣は攻めきれていませんでした」と答えが返ってきた。同時に「あくまでもアジアンブリーズの目的は選手がプロ契約を勝ち取ること。しかし、試合中に攻める姿勢はトライアウトに左右しますし、どの機会を取っても一生に一度になるかもしれないので、後悔を残して欲しくなかったのです」と強調した。

サン・ルイス市長とアジアンブリーズ創設者の色川冬馬氏【写真提供:色川冬馬】

町全体を動かしたアジアンブリーズ

 試合には敗れたものの、アジアンブリーズの挑戦はアメリカの町をも動かした。キンタナロー・ターガースと対戦した際に訪れたアリゾナ州サン・ルイスが、市全体で試合開催を盛り上げていた。試合開催が決まると対戦カードのバナーを制作し、市民に開催をアナウンス。また、試合には市長自ら球場に足を運ぶなど、日本から来たトラベリングチームとの対戦を歓迎した。

 試合前にはセレモニーがあり、試合が始まるとラテンアメリカの音楽を流されるなど、実際のメキシカンリーグの試合と同じ環境がつくられた。プロさながらの雰囲気でプレーしたアジアンブリーズの選手たちは、日本との環境の違いを楽しんでいるようにも見えた。これぞ、このチームでしか体験することができない貴重な出来事であった。

「米国で試合をしながらプロ契約を目指す」という日本発のチームが、米国内にある1つの市を動かしたのは初めての出来事。アジアンブリーズは野球界に、新しい事例と選択肢を与え続ける特別なチームだ。(豊川遼 / Ryo Toyokawa)

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