ル・マン24時間:テストデー用BoP発表。王者ポルシェとラストイヤーのBMW、フォードが重量増

 FIA国際自動車連盟は6月12~16日、フランスはサルト・サーキットで開催される第87回ル・マン24時間レースに先駆けて6月2日に同地で行われるテストデー用のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)を発表した。

 日本のスーパーGT GT300クラスなど世界各地のGT3レースやTCRカテゴリーでも採用されているBoPは、車両ごとに最低重量やエンジン出力、燃料タンク容量といった各項目を細かく定めることで車両間の性能差を調整するもの。

 WEC世界耐久選手権では欧米の自動車メーカー6社が激突するLM-GTEプロクラス、GTEプロと同じレギュレーション下で造られた車両ながら1年以上型落ちとなったマシンで争われるLM-GTEアマの2クラスで採用されている。

 そんなBoPの最新版となるル・マンテストデー用では、プロクラスの2018年覇者ポルシェ911 RSRと今戦が最後のワークス参戦となるBMW M8 GTE、フォードGTの3車種に前年以上の車両重量を課すことが定められた。

 このなかでもっとも大きな変更を受けたのがフォード・チップ・ガナッシ・チームUK、同チームUSAが走らせる4台のフォードGTで、前年比プラス12kgとなる1287kgに。次点はBMWのM8 GTE。こちらは9kg増の1280kgとなった。WEC“スーパーシーズン”第2戦として行われた2018年のル・マン24時間でピンク・ピッグとロスマンズがワン・ツー・フィニッシュを飾ったポルシェは、前年比プラス2kgとなる1271kgだ。

 一方、アストンマーティンとシボレー、フェラーリの3社は昨年よりも最低重量を減らすことが許された。2018年はもっとも重い1291kgでの戦いを強いられたフェラーリ488 GTE Evoは1284kg。モデルチェンジ後2度目のル・マンを迎えるアストンマーティン・バンテージAMRは1251kgで、アメリカから参戦のシボレー・コルベットC7.Rは1242kgとされ、いずれも前年から7kg減となっている。

 この他、エンジン出力面ではフェラーリとフォードのターボ最大過給圧に若干の緩和がみられた一方、BMWはエンジン回転数の全域で50ミリバールの抑制を受けている。

■日本人4名が出場するアマクラスでは新登場のフォードGTが1295kgに

 2名以上のジェントルマンドライバーの起用が求められるGTEアマクラスは例年、アストンマーティンとフェラーリ、そしてポルシェの3社が三つ巴の戦いを展開してきた。しかし、2019年はここに初めてフォードGTがエントリーしている。

 アメリカのキーティング・モータースポーツが走らせるフォードGTはアマクラスで初のBoPを受け、その車両重量は1295kgに設定された。これは前年のプロクラスを戦った車両から20kg重い状態で走行することを意味する。また、同車はターボ過給圧でも30ミリバールの制限を受ける。

 反対に、前世代モデルのバンテージは前年から4kg軽い1249kgでテストデーを迎える。フェラーリ488 GTEも9kg減の1282kgという最低重量を得たが、こちらはフォードと同様に30ミリバールの過給圧制限を受けた。なお、前年のクラス優勝マシンであるポルシェ911 RSRは2018年の数値が据え置かれているほか、GTEプロとアマの全車で燃料タンク容量がTBD(=未確定)とされている。

 予選から決勝までの間に複数回のアップデートが確認された第86回大会のように、GTEクラスのBoPはテストデーから決勝レースまで、イベント期間中に流動的に変化していく。これはル・マンのBoPが、AIを使ったオートマティックBoPを採用しているWECのシリーズ戦とは異なり、人の手で調整されている特徴のひとつだ。

LM-GTEプロクラスと同様に激戦が繰り広げられるGTEアマクラスの隊列

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