ブランド展開の難しさ さてマツダは?

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「報道部畑中デスクの独り言」(第133回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、5月24日に行われたマツダの「マツダ3」発表会などについて解説する。

新型車発表会は東京・品川区の倉庫スペースで行われた

令和になってから決算発表や新車発表会など、今月(5月)は自動車関連の取材が多い月でした。各社の決算は明暗を分けるものでしたが、そうしたなか、2019年3月期の純利益が前期に比べて43.4%減の634億円にとどまるなど、芳しくない数字が並んだのがマツダです。そのマツダが5月24日、小型乗用車「アクセラ」を全面改良し、「マツダ3(スリー)」として国内販売を開始しました。

「来年(2020年)創立100周年の節目を迎える。次の100年に向けてマツダが存続し続けるために最も重要なことは、マツダの独自性である」

東京・品川区の倉庫スペースで開かれた発表会で、マツダの丸本明社長はこのように意気込みを語りました。

倉庫スペースは独特な雰囲気

アクセラは1963年に登場した「ファミリア」を源流とします。トヨタ自動車のカローラや日産自動車のサニーよりも登場は早く、1980年にFF化された5代目の「赤いファミリア」は爆発的ヒットとなりました。その後、9代をもって乗用車としての歴史に幕を下ろし、2004年から車名を「アクセラ」に変更。そして、今回は海外仕様に合わせ、会社名「マツダ」と数字を組み合わせた車名となったわけです。

SUVのCX-5やCX-8の浸透により、英数字の車名に対する顧客の抵抗感がなくなって来たのがその理由だということです。(ちなみに「ファミリア」の車名自体は「ファミリアバン」として、商用車には残っています。マツダの歴史については、こちらをご参照下さい)

アクセラから衣替えした「マツダ3」

車の名前には2つの流れがあります。例えば「トヨタ・クラウン」、これはトヨタが「ブランドネーム」、クラウンが「ペットネーム(愛称)」になります。一方、同じトヨタでも高級車ブランド「レクサス」の車名は「レクサスLS」のように、ブランドネームに英数字をつけています。

日本の自動車メーカー、特に国内向けはレクサスを除いてほとんどがペットネームをつけるパターンです。これはアメリカ、特にきめ細かく車種を展開したGM=ゼネラル・モーターズの影響が大きいと言われています。

一方、ヨーロッパではブランドネームに英数字をつけるものが少なくありません。ダイムラーのブランド「メルセデス・ベンツ」の「Aクラス」「Cクラス」など、 BMWの「3シリーズ」「7シリーズ」など…プジョーのように3ケタ、4ケタの数字で表す車名もあります(商用車除く)。なお、英数字にはグレードや排気量を示すものもあれば、略称的な意味を持たせる場合もあり、様々です。前述のレクサスLSの「LS」はLuxury Sedanの略です。

ペットネームは車種それぞれに違うため、1台1台のクルマを認知させるには有効な手法です。浸透も早く、広告効果も高いと思われます。しかし、海外では商標が重複したり、国によって車名としては不適切な俗語の意味を持つものもあり、国内と海外では車名を変えるケースも少なくありません。

会場の外には歴代ファミリアも展示(画像は2代目ファミリア)

一方、ブランドネームを車名の一部とするのは、何と言ってもブランドそのものを浸透させるのが目的と言っていいでしょう。前述のレクサスも、大衆的イメージのあるトヨタと一線を画すために創設されました。日産も国内にはありませんが、高級車ブランド「インフィニティ」を海外で展開しており、こちらも車名はブランドネームと英数字の組み合わせです。

ただ、この手法は高い商品力を持つことが大前提になります。商品力が低ければそのブランドすべてが「ダメグルマ」のレッテルを貼られてしまう可能性もあります。まさに「両刃の剣」。さらに高い商品力も長く維持し、歴史を重ねることで初めてそのブランドが光り輝くのです。ここにブランド戦略の難しさがあります。

5代目ファミリアはFF化され、大ヒット

かつてマツダ車には「百日新車」「マツダ地獄」というありがたくない言葉がありました。鳴り物入りで登場した新型車も、商品力や販売網の弱さなどで売れ行きが長続きせずに中古車価格も下落。他車に買い替えようとしても下取り価格が低い(つまり「安く買いたたかれる」)ために、次もマツダ車にせざるを得ないという現象を揶揄するものでした。

しかし、この言葉は昨今聞かなくなりました。逆にヨーロッパ市場からは高い評価が聞かれます。様々な努力により、マツダのブランド力が向上した証左と言えるでしょう。今回の「マツダ3」の登場でさらなるブランド力アップ、そして冒頭の経営状況からの巻き返しとなるかどうか、注目されるところです。今後については「国内営業がお客さんと販売会社と相談して決めること」と丸本社長は語りますが、アテンザが「マツダ6」、デミオが「マツダ2」…マツダ車の車名が海外仕様と統一される日は来るでしょうか。

赤いマツダ3とともに丸本明社長

さて今回の新型車ですが、運転席に座ると、室内で手に触れる部分のソフトな表面処理など、丁寧なつくりが印象的です。また一部の車種には「スカイアクティブX」と呼ばれる、ディーゼルエンジンの技術を活用した新型のガソリンエンジンを搭載しています。そのメカニズムについては以前の小欄をご覧いただきますが、丸本社長は「ディーゼルエンジンのレスポンスとトルクの太さと、ガソリンエンジンの伸びの良さの両面を持っている。マツダの“走る喜び”に最も適したエンジン」と話します。搭載車は10月に発売予定で、燃費などのデータは「未定」となっていますが、従来よりも2割程度向上しているということです。

関係者は「究極のNA」と話します。ややマニアックになりますが、NAとはNatural Aspiration=自然吸気の意。ターボチャージャーなどの補機類を使わないエンジンのことです。段付きがなくアクセルを踏んだだけパワーが出るという自然な感覚を大事にしているということですが、果たしてその乗り味は?…楽しみなところです。(了)

マツダ3の運転席に乗ってみた ソフトな仕上げでクラスを超えた質感を持つ