いま注目のアメリカ・テキサスってどんなところ?

アメリカのトヨタやアメリカの三菱重工をはじめ、さまざまなアメリカの企業が移転・進出したり、投資を行ったりしている、近年話題のテキサス州。ビジネス、働く、暮らす目線から、私たちが暮らすカリフォルニア州と比較してみました。

About Texas~テキサスってどんなところ?

アメリカ・テキサス州のGDPは州別で全米2位。国に置き換えれば、ブラジルをやや下回り、世界第10位にあたります。対して、カリフォルニア州のGDPは全米1位。国別GDPでは第6位のフランスをわずかに上回っています。
 
地理的に見れば、テキサス州はアメリカ中南部にあり、メキシコと国境を接し、ニューメキシコ州、オクラホマ州、アーカンソー州、ルイジアナ州と隣接しています。面積ではアラスカ州に次ぐ広さ。人口もカリフォルニア州に次いで全米2位と、多くの人が暮らしています。
 
歴史的には、農業や牧畜業が盛んでしたが、1901年にテキサス南東部で油田が発見され、石油ブームが発生して以後、テキサス州の経済構造は一変しました。しかし1980年代に石油価格が大暴落。その後、石油価格は回復しましたが、今やテキサス州の主要産業はハイテク産業、通信産業、運輸産業、農業、航空宇宙産業などと多角化しているのが特徴です。

テキサスの州都・オースティンと主な都市

●ダラス

テキサス州北部にあるダラス。ダラス-フォートワース都市圏として全米4位、テキサス州最大の710万2165人(2015年推定、U.S. Census Bureau)に上る人口を抱えています。ハイテク産業やIT関連企業が集まっており、テレコム・コリドーの別称も。ジョン・F・ケネディ第35代アメリカ大統領が暗殺された場所としても知られています。トヨタ自動車の北米本社が移転するのは、ダラス郊外の町、プレイノ。

●ヒューストン

テキサス州南東部にあり、都市圏別では全米5位の規模で665万6946人(2015年推定、U.S. Census Bureau)が暮らすヒューストン。ヒューストンとダラスの両都市圏の合計の人口で、ほぼロサンゼルス都市圏と同一規模です。石油、エネルギー産業の世界的拠点であり、 Shell Oil Companyなどが拠点を置いています。NASAのフィールドセンターの一つ、ジョンソン宇宙センターもあります。

●オースティン(州都)

テキサス州の中央部にある、テキサス州の州都。都市圏別の人口では、ダラス、ヒューストン、サンアントニオに次ぐ第4位。政府機関が集まるほか、テキサス大学オースティン校など有数の高等教育機関もあります。Dell本社をはじめ、多数のIT企業、ハイテク企業が集まっていて、シリコンバレーにならって「シリコンヒル」とも呼ばれています。

テキサス州旗

テキサス州の州旗はひとつ星が輝く「ローンスター」。1845年にアメリカへの併合により消滅したテキサス共和国の国旗のデザインを受け継いでいます。テキサス州の別名は、この旗のデザインから付けられた「Lone Star State」。

テキサス州の歴史

●1500年代
スペイン人の探検家らがテキサスに上陸。
●1685‒1689
フランス領テキサス時代。1685年、フランス人がテキサスの植民地化を宣言。しかし長くは続かず、1690年より代わってスペイン人が支配。
●1690‒1821
スペイン領テキサス時代。1821年、メキシコ独立革命により、メキシコがスペインから独立。テキサスはメキシコ領テキサスに。
●1821‒1835
メキシコ領テキサス時代。1835年、テキサス住人がメキシコに対して反乱(テキサス革命)を起こし、分離を宣言。
●1836‒1845
テキサス共和国時代。1839年にはオースティンがテキサス共和国の首都に。
●1845‒1861
1845年、テキサスはアメリカ合衆国に28番目の州として併合。
●1861‒1865
アメリカ連合国時代。テキサス州は1861年にアメリカ合衆国を脱退し、奴隷制を認めていた南部の諸州らが集まって建国したアメリカ連合国に参加。65年、南北戦争での敗北によりアメリカ連合国は消滅。
●1870
1865年からは暫定的にアメリカ合衆国がテキサスを統治。70年、テキサスは連邦議会により州として再承認。

アメリカ・テキサス州とカリフォルニア州の比較・テキサスの特徴

(データ:面積と人口はU.S. Census Bureau、GDP(chained in 2009 dollars)はBureau of Economic Analysis)

人口密度

テキサス州の人口密度は、カリフォルニア州の4割程度。ちなみに全米の人口密度は87.4人、ニューヨーク州は411.2人です。無論、人口は都市部に集中しており、都市部での人口密度はさらに高くなります。

気候・気温

広大な面積のテキサス州はエリアによって気候が異なります。ヒューストンのある南部は亜熱帯気候で湿度が高め。ダラスのある北部は乾燥しており、冬には雪が降ることもあります。

黄色グラフ:ヒューストン平均降水量
水色グラフ:ロサンゼルス平均降水量
紫色線:ヒューストン平均最高気温
青色線:ロサンゼルス平均最高気温
黒色線:ヒューストン平均最低気温
灰色線:ロサンゼルス平均最低気温

財政

法人、個人ともに所得税がゼロのテキサス州では、主な税収源は売上税・使用税で、税収の4分の1を占めています。カリフォルニア州では税収源の6割近くが個人の所得税です。

人種

カリフォルニア州のマジョリティー・エスニックは、今やヒスパニック/ラティーノですが、テキサス州では白人です。カリフォルニア州では15%弱を占めるアジア系は、テキサス州では5%弱に過ぎません。

年齢

テキサス州の人口は、65歳以上の割合が他州に比べて少なく、今後の労働と消費の担い手となる17歳以下の若い層が厚くなっているというのが特徴的です。

年収

テキサス州における年収の中間値はアメリカ全体と比較しても低いですが、所得税がなく、物価や家賃などの生活費も比較的低め。

学歴

テキサス州、カリフォルニア州ともに有数の高等教育施設があり、優秀な人材が豊富だと言えます( データは25歳以上の人口の最終学歴)。

宗教

テキサス州では人口の77%がキリスト教信者であり、プロテスタント、なかでも福音派の信者が多く暮らしているというのが特徴です。

在留邦人数

絶対数は少ないもののテキサス州に住む日本人(在留邦人)は増加傾向で、2016年は前年比10.3%増。カリフォルニア州では、サンフランシスコ領事館の管轄地域で前年比2.7%増、ロサンゼルス領事館管轄地域では同マイナス1%と減少。

アメリカ国外の出生率

メキシコと国境を接するテキサス州の人口に占める米国外出生率は、アメリカ全州の中で平均を上回っています。とはいえ、アメリカでもっとも移民の多いカリフォルニア州と比べれば、10%ほど低めです。(データ:2011-2015 American Community Survey 5-YearEstimates, U.S. Census Bureau)

不法移民人数

州別の不法移民人口ではカリフォルニア州が最多で、テキサス州が続きます。この2州でアメリカの不法移民の約40%を構成。合法的な移民でないとはいえ、現実的に不法移民はアメリカ経済において無視できない存在です。

婚姻率

宗教的に保守的な層が多いテキサス州では、婚姻率も高めというのが特徴。なお、2015年に連邦レベルで同性婚が認められ、カリフォルニア、テキサスを含む全ての州で同性婚が可能となっています(データは15歳以上の人口の調査時点の結婚ステータス)。

支持政党と2016年大統領選

共和党支持が多い印象のテキサス州ですが、都市部では民主党支持が多く、2014年の調査では、テキサス州での共和党、民主党支持者の数はほぼ拮抗しています。一方、カリフォルニア州では民主党支持層が人口の過半数を占めています。

Why Texas~なぜテキサスに企業移転や進出が増えているの?

米国トヨタのダラス郊外への本社機能の移転をはじめ、Jamba Juiceのテキサスへの本社移転など、近年、アメリカ西海岸のカリフォルニアからテキサスへと移っていく企業が増えています。またテキサスへの新たなオフィス設立や投資なども急増中。テキサスとカリフォルニアはビジネスにとってどんな違いがあり、なぜテキサスが注目を集めているのでしょうか?企業移転が増えている理由を探ってみました。

テキサスへの企業移転理由その1:

成長し続ける経済

2010年以降、エネルギー産業、ハイテク産業などがテキサス州の経済を牽引し、同時期にはシェール資源開発も本格化。これらの経済活動の活性化と共に人口も増加しています。豊富な資源を持つ生産拠点であり、拡大し続ける労働・消費市場を持つ土地でもあります。

[州内総生産(実質GDP成長率)]

金融危機後、いち早く回復したテキサス州経済。ただ近年の原油価格の下落から石油・エネルギー産業の成長が低迷。GDP成長率も横ばいです。

[人口]

活性化する経済活動と共に、テキサスの人口も5年間で9.2%増と急速な伸びを記録しています。

[失業率]

世界金融危機を受け、全米で失業率が急上昇しましたが、その後、景気の回復とともに雇用は全米で徐々に回復しています。シェール資源関連等新たな雇用が増えているテキサスの失業率は、全米、カリフォルニア州を下回っています。

[住宅価格指数]

一戸建て住宅価格の再販価格動向を示す「住宅価格指数」。この数字の伸びは、個人消費や賃金の伸びにつながると言われ、景気の動向を表す指標の一つ。12年以降、テキサス州ダラスの住宅価格指数は右肩上がり。(住宅価格指数、月額季節調整済み、データ:S&P/Case-Shiller Home Price index ©、©2016, S&P Dow Jones Indices LLC)

テキサスへの企業移転理由その2:

豊富な天然資源

テキサス州には、企業の製造活動に不可欠な石油、天然ガス、石炭などの天然資源が豊富にあります。

[原油]

2015年、全米の原油生産の3分の1以上をテキサス州が担っています。

[天然ガス]

天然ガスに関しては、全米での生産の4分の1以上がテキサス州で行われています。

テキサスへの企業移転理由その3:

ビジネスコストの低さ

アメリカ・テキサス州でビジネスを行う際のコスト面でのメリットは、まず州の所得税が基本的にかからないこと。地方自治体単位で課税される固定資産税の税率は高めですが、それを補って余りあります。その他のメリットとしては、不動産価格の低さ、最低賃金の低さも挙げられます。
 
また環境面や安全面の規制においてもカリフォルニア州の厳しさは群を抜いており、そうした規制に対応するためにかかるコストにおいても、テキサス州は低めです。

[税金]

(データ:Texas Comptroller of Public Accounts、State of California Franchise Tax Board、California State Board of Equalization、State of California Employment Development Department、Texas Workforce Commission、smartasset)

[最低賃金]

テキサス州の最低賃金は、連邦と同じ時給7.25ドルと定められています。また、テキサス州では月に30ドル以上のチップを受け取る従業員に対しては、チップの一部(最大5.12ドル)をチップクレジットとして数え、2.13ドルの最低賃金(チップクレジットとの合計で最低賃金の7.25ドルに達します)で雇用することが可能です。一方、カリフォルニア州ではチップを受け取るか否かにかかわらず最低賃金は10.50ドルで、2022年まで毎年段階的に最低賃金が引き上げられ、22年には時給15ドルとなる予定です。

※若年者最低賃金:テキサス州では、20歳未満の従業員には、雇用開始から90日間に限り、若年者最低賃金での支払いが可能。
(データ:2017年1月現在、従業員26人以上の会社の場合、United States Department of Labor)

[不動産価格]

不動産検索サイト「Zillow」が扱った不動産価値の変動を見ると、テキサスでは、過去1年で8.1%、カリフォルニアでは6.9%上昇しています。Zillowは今後1年でテキサスでは3.8%、カリフォルニアでは2.3%上昇すると予測しています。

(データ:2016年11月30日時点でZillowにリスティングされている不動産を基にしている。Zillow)

[業務用電気・天然ガス料金]

事業に不可欠な電気、天然ガスもテキサス州では、非常に安価です。

(データ:電気料金は2016年10月、天然ガス料金は2014年のもの、U.S. Energy Information Administration)

テキサスへの企業移転理由その4:

雇用者寄りの法律

「テキサス州が雇用者寄りの州であると言われる理由は、人権意識の高いカリフォルニア州のように連邦法を上回る雇用主側に厳しい独自の労働関連州法が極端に少ないこと、加えて『Right-to-work法』を施行する州であるためです」と、人事労務コンサルティング会社HRM Partners, Inc.の上田さん。

[Right-to-work州]

取材協力: HRM Partners, Inc. Vice President and Partner 上田宗朗さん

2017年2月現在、テキサス州を含め全米28州がRight-to-work法の制定州です。Right-to-work法は簡単に言えば、従業員が労働組合への加入を強制されず、また組合費の支払いも拒否できる権利を有するということです。一方、カリフォルニア州はそうではなく、従業員は勤務先の会社や工場などに労働組合があった場合(本社にはなく、工場のみに労働組合がある場合もあります)、加入を拒否できません。
 
「確かにひと昔前は、労働組合は従業員の待遇をより良くするものとして支持されましたし、現在もなお、同組合が有用に働く業界があることは事実です。しかし人権意識の高まりにより、法律や人事慣習に沿ってこれだけ賃金や福利厚生が充実してきた昨今では、プライベート企業の組合加入率は全米で7%を下回っています。また近年は毎月の給料から天引きされる組合費を払いたくない従業員が増えており、一方の雇用主側も組合との厳格な契約に縛られずに労務管理を行えることから、同法を可決する州が増えているのが現状です。ビジネスにとっては、Right-to-work法を制定していない州では、依然として労組が組織され労使対立が起きる恐れがあることが一つのリスクとして捉えられています」(上田さん)。

テキサスへの企業移転理由その5:

地理的メリット

北米大陸のほぼ東西中央に位置し、メキシコと国境を接するテキサス州は、全米のみならず、南北アメリカ、そして欧州、アジアとの物流および人的移動の要になっています。中西部標準時のタイムゾーンに位置することから、東海岸標準時ゾーンにあたるニューヨーク、ワシントンDC、アトランタ、デトロイトなど、山岳部標準時ゾーンにあたるデンバー、ソルトレイクシティーなどとは1時間差、太平洋標準時ゾーンにあたるロサンゼルスやシアトルなどとは2時間の時差と、人的移動にとっても便利な土地です。航空会社各社のハブ機能が集中しているのもテキサスの特徴の1つです。

●ダラス/フォートワース地区

ダラス/フォートワース国際空港(航空):発着数全米4位。American Airlinesの本社がある。
ダラス・ラブフィールド空港(航空):発着数、全米44位。Southwest Airlinesの本社がある。
アライアンス・グローバル・ロジスティクス・ハブ:鉄道、航空(フォートワース・アライアンス空港)、トラックと多様な輸送を扱うインターモーダル輸送のハブ拠点。FedExアメリカ南西部の仕分けハブ拠点でもある。

●ヒューストン

ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港(航空):United Airlinesのハブ空港。アメリカで12位の発着数。
ヒューストン港(海運):アメリカで2位の取り扱い貨物量。鉄道会社のUnion PacificとBNSFが、インターモーダル輸送施設を運営。

●サンアントニオ

ポート・サンアントニオ:航空(ケリー・フィールド空港)、鉄道、トラックのインターモーダル輸送のハブ拠点。

●ラレド

ラレド港(鉄道、トラック):国境の町ラレドにある米国の税関。2014年には、メキシコからの総輸入額の約36%、1927億ドルがここから入国。

[海運]

メキシコ湾に面したテキサス州には、大型貨物船が入港できる深水港が11港あり、うち6港は全米取り扱い貨物量トップ50にランクイン。2016年に、これまで渋滞や大型船舶の通航が難しいことが問題であったパナマ運河で拡張工事が終了。パナマ運河から最も近い米国内の港であるヒューストン港では、ビジネス拡大が期待されています。

[鉄道]

州内には全米最長の1万469マイルにおよぶ線路が敷かれており、貨物鉄道は49社によって運行(2012)。また約20カ所のインターモーダル輸送施設があります(データ:Texas Department of Transportation)。2011年には、メキシコからアメリカへの鉄道貨物のうち89%がテキサス州から入国(「Texas Logistics Hub of the Americas 2013」)。

[航空]

全米で最も発着数の多い50空港のうち6空港がテキサス内の空港です(2013, U.S. Bureau of Transportation Statistics)。北米、中南米への直行便に加え、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、アジア各地へも直行便が定期運航。ニューヨークを3時間強、シカゴを2時間半、ロメキシコシティーを2時間半弱で結びます。

[トラック]

テキサス州内には31万3228マイルにおよぶフリーウェイ交通網が張り巡らされています(2013, U.S. Bureau of Transportation Statistics)。国境沿いには、米墨を結ぶ橋梁が27基あり、うち17基が通関ゲートとなっています。2011年には約330万台のトラックがテキサスを通ってアメリカに入国(「Texas Logistics Hub of the Americas 2013」)。

[テキサス州の貿易]

航空、海運、鉄道、トラックとさまざまな物流システムが発達しているテキサス州は、アメリカ国外との貿易においても非常に重要な役割を担っており、アメリカで最多の輸出額を誇ります。2位はカリフォルニア州。
 

●州別輸出額

全米での輸出総額は1兆5025億7222万9518ドル。テキサス州はそのうちの16.5%を占めています。

●輸出相手国

テキサス州の輸出相手国は、NAFTA(北米自由貿易協定)を結ぶメキシコとカナダが1、2位。日本も8位の輸出相手国です。なお、テキサス州からメキシコへの輸出は、アメリカ全体からメキシコへの輸出の39.2%と非常に高い割合です。

●主要輸出品

テキサス州の輸出品目は、2011年に、石油・石炭製品がコンピューター・電気製品を抜き、最多となりましたが、1年には再びコンピューター・電気製品が首位の座につきました。

テキサスへの企業移転理由その6:

暮らしやすい環境

テキサス州は雇用者寄りの州と言われ、確かに労務面では被雇用者にとって恩恵の少い土地です。しかし、暮らしの面では土地が広く、不動産価格や物価が安い上に、州の個人に対する所得税もないテキサスは、労働者にとってものびのびと暮らせる環境です。ただし温暖なカリフォルニアと異なり、夏は蒸し暑く、冬は寒くなるなど気候は厳しいと言えます。

[個人の収入と税金]

テキサス州では法人も個人も、州の所得税はゼロ。

(データ:U.S. Census Bureau, State of California Franchise Tax Board)

[生活費]

以下は、投稿者ベースの生活費比較サイトによる2016年2月19日時点の各都市の所得、生活費各項目の平均価格。手取りの所得は、税金の高いロサンゼルスをダラスが上回っていますが、家賃や不動産価格はロサンゼルスがヒューストンやダラスよりはるかに高額です。

[治安]

テキサス州では、自衛やハンティングなどの目的から銃を保有する人も多くいます。また、2016年1月より拳銃携帯許可を保持していれば、公の場でも隠さずに拳銃を携帯することが可能となりました。とはいえ火器による死亡数は全米をやや上回る程度です。

[通勤時間]

平均通勤時間は、カリフォルニア州がやや長くなっています。

[教育環境]

テキサス州は子どもの教育にとっても、期待の持てる環境です。個人向けファイナンスサイト「WalletHub」が、2016年に発表した学校システムに関する州別ランキング(中退者率やSATのスコアなどを基に総合的に算出)によると、テキサス州は21位(学校システムの質では26位、学校の安全性の面では10位)と、カリフォルニア州の40位(学校システムの質では38位、学校の安全性の面では35位)を大きく上回っています。

「U.S.News」が発表した2016年の高校ランキング(州全体の高校数に占める、大学進学準備テストのスコアなどをベースにしたゴールドメダル、シルバーメダル授与校合計の割合でランク付け)では、カリフォルニア州が3位に入った一方で、テキサス州は28位に留まっています。ただし、ゴールドメダル校数ではカリフォルニア州に次いで、テキサス州が全米2位となっています。

インタビュー:テキサスの進出のきっかけは? “カリフォルニア州外へ”が最初の理由でした

質問:2016年テキサス州プレイノに進出したKULA SUSHI。これまでアメリカでの展開はカリフォルニア州のみでしたが、なぜテキサス州に進出したのでしょうか?

Kula Sushi USA, Inc President 姥一(うば はじめ)さん

一つ目の理由は、カリフォルニア州の最低賃金の上昇です。2014年にそれまでの時給8ドルから9ドルに上昇し、現在は10.50ドル。そして2022年には15ドルになりますので、このままでは利益が出なくなるほどコストが上がってしまうと考えたのです。また賃金の上昇と共に物価も上がっていけば、従業員の確保も難しくなります。ですからテキサスに進出するというよりも「カリフォルニアから出る」ところから発想したのです。
 
どこに行こうかと考え、私たちの経営のクライテリアに合致する場所を5~10カ所に絞ったところで、トヨタ自動車がテキサス州プレイノに移転するというニュースを知ったのが2つ目の理由です。プレイノを見に行ってみたところ、今我々の本社があるアーバインの、おそらく15年ほど前と近い雰囲気でした。つまり15年経ったらプレイノがアーバインのようになる可能性を感じたのです。加えて、プレイノ1店舗だけではなく、その他のダラス近郊、さらにヒューストンやオースティンも含めて、合計約9店舗出せる可能性があり、カリフォルニアの次の候補地として最有力だろうと。また、その際に気に入った物件を具体的に見つけていたことも理由の一つです。
 
テキサス以外の州も見に行きましたが、他の州では出したいと思う場所が見つからなかったのが3つ目の理由。
 
4つ目は、テキサスの労働力の安さです。カリフォルニアでは、チップをもらう人ももらわない人も最低賃金は同一ですが、テキサスを含む多数の州ではチップの有無によって差を付けることが認められています([最低賃金]の項目参照)。チップをもらう従業員のテキサスでの最低時給は2.13ドルで、チップとの合計で連邦の定める最低時給の7.25ドルになれば問題はありません。KULAのチェーン展開における武器の一つは、機械による省力化などで、未経験でも3~4カ月で店の運営が可能となること。ですから簡単な仕事で、
 
かつサーバーの数が少ない分より多くのチップがもらえるとなれば、労働市場で競争力が出るのではないかと。また人件費も下がりますから、店としても利益が出やすくなり、有望な土地ではないかと考えました。
 
5つ目の理由としては、日本食の供給がまだ少ないのではないかという私の仮説です。テキサスでは日本食店が繁盛していますが、この理由の一つは需要に対して供給が追いついておらず、かなり広範囲からお客様が訪れているからではないか。非常にこれからの伸びしろがあると推測したのです。

質問:カリフォルニアと比較して日本人が少ない土地ですが、その点に懸念は?

KULA全店を平均しますと、お客様の中の日本人の方の比率は2~3%とそれほど多くはありません。しかし、数は少なくとも日本人がいらしてくださる店舗は、高い売上を出しています。我々はこちらで知名度がありませんが、KULAをご存知の日本人が現地のご友人や同僚を連れて来店してくださり、広告塔として貢献してくださっているのがその理由ではないかと思います。ダラス近郊はトーランスと比べれば日本人は少ないですが、アーバインやソーテルと比べればあまり変わりません。彼らが同じようにお店の最初の牽引役になってくださることは十分期待できると考えています。

質問:実際にテキサスに出店されて、気付いた違いを教えてください。

雇用の面では、カリフォルニアよりもメキシコ系の方がキッチンで働いている割合が低く、キッチン従業員の採用がやや難しい状況があります。
 
それから非常に大事なのは商圏の違いです。テキサスは渋滞が比較的少なく、また下道での制限速度も緩いのでおのずと商圏が広くなります。カリフォルニアなら例えば半径3マイルで考えるところを、テキサスなら5マイルと考えても良い場合があり、それを踏まえると距離は離れていてもフリーウェイから近ければ、アクセスの良い場所もあります。
 
暮らしの面では、固定資産税は高いものの、家の値段も、ガソリンも物価も安いですね。テキサスはデイケアや評価の高い学校も多く、広々とした公園も多数あり、家も広いので子育てには恵まれた環境だと思います。一つテキサスの悪いところで言えば天候です(笑)。夏は40℃近く、冬はマイナス5℃になるかと思えば18℃にもなるなど差が大きいのはしんどいですね。

インタビュー:日系企業にとってのテキサスとは? “新たな段階に移るアメリカ展開の一つの解決策”

質問:ビジネスにとってのテキサスの魅力は何でしょうか?

JETRO Houston 所長 黒川淳二さん

テキサス州では、人口、GDPなどいろいろなものが伸びており、特にヒューストンとダラス両都市圏の規模、伸びが顕著です。他州の主要都市と比較しても、労働市場・消費市場の担い手である若い人が比較的多いです。優秀な大学も多く、良い人材が採用できるのも、企業の成長のための大きなメリットでしょう。
またシェール資源のように低コストで資源が手に入るようになったことも大きいと思います。原料を輸入せずとも、州内で採れる資源を使って化学製品を作れるようになったわけです。
 
空港や海港があり、メキシコと国境を接していることも魅力の一つでしょう。ダラスとヒューストンの空港は、それぞれアメリカン航空とユナテッド航空の中南米向けのハブ拠点として機能しています。便数も多く、日本からの乗り換えという面でも便利で、中南米ビジネスに関心を持つ企業には主要な玄関口として捉えられています。地理的に大陸の真ん中にあり、アメリカ国内のみならず中南米への移動がしやすく、全米各地との時差が少ないので遠隔会議がしやすいのも、本社機能を移転・集約する場合には大きなメリットになっています。
また法人個人ともに州の所得税がなく、労務面でもどちらかというと事業者に優しく、事業コストが相対的に割安になるのも、メリットの一つでしょう。

質問:日系企業にとってのテキサスとは?

日系企業のアメリカ進出の歴史から言うと、日米間の物流や人的移動もしやすいという地理的メリットなどから、カリフォルニアをはじめとする西海岸が最初の上陸場所として選ばれてきました。アメリカ経済の中心であるニューヨークにも多くの企業が進出し、80年代後半からは、特に自動車関連企業を中心に中西部も一大拠点になりました。その中でテキサスはほとんど手つかずの場所だったわけです。しかし、西海岸、東海岸と拠点・市場を広げ、今後どう束ねていこうかと考える段階で、これまで申し上げたメリットや今後の成長性を勘案すると、日系企業にとってテキサスへの移転・進出が一つの解決策として映ったのではないでしょうか。ジェトロで毎年行っている「米国進出企業経営実態調査」でも、「今後2~3年で市場の拡大が見込まれる地域はどこか」という設問(複数回答可)に3年連続でテキサス州が1位に選ばれており、多くの企業が可能性を感じています。エネルギー関連では実際に掘削を行う企業が増えるにつれて、制御装置や機械・部品などを扱う日系企業の進出も増えています。また製造業だけでなく、不動産や小売・外食産業といったサービスからも、当地についてお問い合わせを受けることが増えてきました。こうしたことから、ジェトロとしても昨年11月にダラスに拠点を設け、ビジネスのお手伝いを開始しました。
 
NAFTA(北米自由貿易協定)で潤ってきた州の一つとしては、トランプ政権によるNAFTA の見直しは不安材料ですが、エネルギーやインフラ等に限らず、州経済の発展とともに大きな可能性を見出せる場所であると考えられています。
 

質問:テキサスでの生活はいかがですか?

共和党の牙城というイメージがありますが、ヒューストンやダラス、オースティンなど主要都市および国境地帯は民主党支持層が多いです。都市では外国人や多様な人種も混在しており、リベラルな面もあります。ただし郊外では昔からの伝統的な価値観が保たれているところも多くあります。
カリフォルニアから移って来られる方からよく聞くのは「思ったより良いところですね」という声です。期待値が高くないのでしょう(笑)。外から来た人間に対してフレンドリーな場所であり、家も広くて安く、のんびりとしていて住みやすい場所です。

『ヒューストン・ダラス スタイル』

ジェトロが発行している世界の各都市の注目市場を紹介するスタイルシリーズの一冊。テキサス州のヒューストンとダラスの2都市の経済データや現場の声を盛り込み、ファッション、食、暮らしといったさまざまな角度から両都市の消費市場が紹介されている。(2016年3月発行)

Webサイト:JETRO WEB

※このページは「2017年3月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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