「避難せよ」の心の声を

 切迫した感じのアナウンスに「これはただ事ではない」と慌てて避難した住民もいたという。東日本大震災で大津波警報が出された茨城県大洗町は、防災行政無線で「避難せよ」と命令口調で呼び掛けた▲「避難してください」を言い換えるよう、町長が指示したらしい。「大したことはない」と思いたがる人の心理を分かった上で、危険が迫っているのを厳しい調子で伝えた▲異変が起き、避難を呼び掛けられても「自分だけは大丈夫」「まだ大丈夫」という心理が働いて避難せず、命を落とす場合があるとされる。昨年の西日本豪雨でも、その思い込みの危うさが指摘された▲つい「大丈夫」と思いたがる心に緊張の糸は張るかどうか。気象庁は29日から、豪雨で危険が予想される際に取るべき行動を5段階で表すようにした。例えばレベル3だと「高齢者は避難を」、レベル4は「災害の発生する恐れが極めて強く、緊急避難を」と促す▲警報、注意報のほかにも気象情報はいろいろあって、どれがどう危ないのか分かりづらい。何年かに1度という大雨情報を慣用句のように聞く異常気象が続き、緊迫度がよく伝わってこない。切迫感をもたらす「5段階表示」になるといい▲大雨、土砂災害が心配される時期が近い。「大丈夫」よりも「避難せよ」と心の声を発したい。(徹)

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