栃木→ドジャース 元DeNA北方悠誠の米球界移籍が独立リーグにもたらすもの

左から栃木ゴールデンブレーブス・寺内崇幸監督、北方悠誠、ドジャース日本担当顧問・鈴木陽吾氏、栃木県民球団代表の薮下和弘氏【写真:編集部】

元巨人・寺内栃木GB監督が抱く期待、北方の活躍と独立リーグの未来

 米大リーグ・ドジャースとマイナー契約を結んだ栃木ゴールデンブレーブスの160キロ超右腕、北方悠誠投手が30日、栃木・小山市内の栃木県民球団県南事務局で入団会見を行った。北方の隣で、微笑むように右腕を見つめていたのは昨年まで巨人でプレーしていた寺内崇幸監督だった。

 記者会見に同席した寺内監督は「北方投手をドジャースに送り出せるということでワクワクしています。楽しいこと、苦しいこと…あると思いますが、自分が思ったことを素直に表現し、かんばってほしい」とエールを送った。

 4月のシーズン開幕後から、どんどん上がっていく北方の球速表示が気になっていた。「実際、この数か月、僕自身も一ファンとして見るような感じでした」とその速球に魅了された一人だった。

 監督と選手。立場は違うが、同じ栃木1年目。寺内監督は3月のオープン戦の前から、投球内容がよくなっている北方を見て、手応えと同時に複雑な思いを持っていた。戦力として大きな期待。それともう一つ、“上のレベル”へ、移籍してしまうのではないかという不安だった。

「若い野球選手も独立リーグで野球をしたいと思ってくれることを期待したい」

 昨季まで、NPBでプレーしていたため、寺内監督の感覚は現役選手に近い。北方のこの状態の良さならば、どこかの球団と契約するのは時間の問題と察知していた。

「独立リーグにはいい選手が多いですし、持っている能力はNPBの若手とそんなに変わらないと思います。個人の能力、野球への思いは変わらない子たくさんいる。北方投手は諦めない姿が一番、お客さんにもスカウトにも届くのではないでしょうか」

 毎日のように練習し、球場を出ればプロとしてファンへの感謝を直接、伝えていた。そんな野球と真摯に向き合う北方の姿を見てきたという。

「心優しい部分も野球への思いに伝わっているのかなと思います。日本を離れますが、人柄の心配はしていません」と太鼓判を押す。

 NPB復帰を目指していたが、目の前に開けたメジャーへのチャンスの道。環境や待遇はチームによって違うものの、独立リーグが示した新たなステップアップの形でもある。
 
「メジャーに行く機会いただけてドジャースの方々には感謝しかありません。これを見てくれている若い野球選手も独立リーグで野球をしたいと思ってくれることを期待したいです」

 メジャーのスカウトの目に留まった北方の奮闘は、野球を続けたい人への大きなメッセージとなった。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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