デスク日誌(5/31):クジラの味

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 一昔前、取材で捕鯨の調査船に乗った。金華山沖でクジラを見つけると、甲板長がマスト(帆柱)の上から「ノース!(北へ)」「サウス!(南へ)」。

 海原を高速で追跡して射程圏に入ると、砲手がもりを「ドカーン」と発射。命中させて10メートルを超えるミンククジラを仕留めた。

 捕鯨基地・鮎川がある石巻市で生まれ育ち、子どもの頃は日常的にクジラの肉を食べていた。大漁の時は親戚の家へお裾分けを受け取りに。鮎川中(現牡鹿中)近くの上り坂を越えると、クジラ独特の匂いがしてきた。

 頂いた肉は塩焼きにしたり、カレーライスに入れたり。夏バテの時は塩漬けの肉をあぶって細かく刻み、お茶漬けに。学校の給食にも大盛りの竜田揚げ。体の隅々の細胞までクジラの栄養が行き渡った。

 国際捕鯨委員会(IWC)を脱退した日本は7月、商業捕鯨を再開する。保護と伝統の食文化を何とか両立させていくしかない。体からクジラタンパクはもう消えたのだろうか。それとも、まだ残っているのか。商業捕鯨と聞くと、「あの味をもう一度」とつい胃袋がピクリとする。 (写真部次長 及川圭一)