少女に打球直撃で選手は涙 MLBが声明も…米紙は「何も変わろうとしていない」

ファウルがファンに直撃し、涙するカブスのアルモラJr.(右)【写真:Getty Images】

アルモラJr.の打球が少女に直撃、再発防止への防護ネット拡大へ「野球ファンが声を上げるべき」

■カブス 2-1 アストロズ(日本時間30日・ヒューストン)

 29日(日本時間30日)のヒューストンでのアストロズ-カブスの一戦で、カブスのアルバート・アルモラJr.外野手の痛烈なファウルボールが観戦していた4歳の少女に直撃するというアクシデントがあった。アルモラJr.は涙を流し、試合は一時中断。波紋が広がる中、米メディアからは再発防止のためにメジャースタジアム防護ネット拡大に向けて「野球ファンが声を上げるべき」という意見も出ている。

 ショッキングな場面だった。カブス2点リードで迎えた4回。無死一、二塁で打席に立ったアルモラJr.がマイリーから三塁方向への痛烈なライナーを放つと、打球はスタンドへ飛び込んだ。その瞬間、球場が静まり返った。ファウルボールは少女を直撃しており、アルモラJr.はその場で座り込んで涙。同僚やジョー・マドン監督が慰め、試合は一時中断した。

 地元紙「USAトゥデー」は「MLBの球団に防護ネット拡大を求めるのは野球ファン次第だ」と特集。同紙によると、アルモラJr.は試合後に「もしも許されるのなら、一生かけてこの少女と絆を構築していきたい。でも、今は祈ることしかできません。自分にできることはそれだけ」と語ったという。

 記事では「アルモラの経験した苦痛に耐えたいと願う野球選手は、誰一人としていない。自分のバットから放たれたファウルボールが、子供を怪我させてしまう瞬間を見しまうということなのだから」とレポート。メジャーのスタジアムでの打球に対する観客への保護対策の観点から、子供にスタンド観戦させない選手もいると紹介している。

 レッドソックスの左腕デビッド・プライス投手は、記事の中で「ハビエル(2歳男児)が試合観戦に来るときには、(打球が飛んできても防護されている)“室内”で見るようにさせている。打球はこれまでにないほどスピードを増している。毎度のことだけれど、これはMLBが行動を起こすべき案件だよ」と語っている。野球の“変化”から、ファンのリスクは増えているというのだ。

MLBは声明発表も…「実際のところ、何も変わろうとしていない。現時点では、だ」

 昨年8月には、ドジャースタジアムで79歳の女性が打球を頭部に受けて死亡する痛ましい事故が起きたことにも記事では言及。昨季開幕前には、MLBが両軍ダグアウトまで防護ネットを拡張することでオーナーと合意に達したばかりだが、部分的に拡張されたネットでは今回の悲劇を防ぐことはできなかったということになる。

 MLBは今回のアクシデントに対し、「昨晩の出来事は極めて心苦しいものでした。お子様とご家族の無事をお祈りします。昨夜の出来事を念頭に、我々はこの重大な問題に対して努力を進めていくつもりです」と声明を出したという。だが、特集では「実際のところ、何も変わろうとしていない。現時点では、だ」と問題提起している。

 その一方で、4歳の少女のアクシデントの後も、一部の球団オーナーにはファンからネットのこれ以上の拡張に対する反対意見が届いていると特集では指摘。ネットの存在を良しとしないメジャーファンは存在するというのだ。負傷のリスクを理解しながらも、見晴らしの良さ、ファウルボールのキャッチなどを優先するファンの意向も紹介する一方で、「試合について語り合いながら帰宅したいのか、もしくは子供の無事を祈っていたいのか。もう十分だ」と改善の必要性を主張している。

「選手はすでに口を開いた。大事な子供も怪我をしてしまった。あとはあなた次第だ」

 MLBとオーナーをこれ以上動かすのはメジャーファンの声以外にないという。4歳の少女のスタジアムの安全面を憂慮する声は日増しに高まっている。(Full-Count編集部)

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